路上にまつわるあれこれ | 夕暮れ 坂道 島国 惑星地球

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高橋徹也 official Blog

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路上にまつわるあれこれ
 
約三十年振りだろうか。アメリカ文学の中でも、ある時代を象徴し、今も読み継がれる青春小説、ジャック・ケルアックの『路上(原題:ON THE ROAD)』を読み直している。この小説、多くの読者にとってもそうであるように、僕にとっても青春のバイブルと言える思い入れ深い一冊である。確か1990年代初め、僕が二十歳を迎えようかという時期、当時懇意にしていた先輩に薦められて出会ったのが最初だった。二十歳を迎えるにあたり最初にしたことのひとつが自動車の運転免許を取得すること。特に落第科目もなく無事に免許を取り終え、アルバイトで貯めたお金をもとに人生最初のマイカー(中古車)を購入。確か友達の親父さんの中古車屋で25万くらいの値段だったと記憶している。ツードアのマニュアル車で色は白。後ろに楽器が積めるハッチバック・タイプの小さな車、トヨタのコルサを選んだ。話は逸れるけど、僕が乗ってきた歴代の車の中では、この最初の一台が一番お気に入りで愛着がある。初めて自分で旅行したのもこの車だし、ギターを積んで何度も練習スタジオに通ったのもこの車だ。とまあ、思い出話が長くなったけど、こうしたいきさつもあって、車を運転する楽しさに目覚めたばかりの高橋青年にとっては、この『路上』という作品がうってつけのお手本になったわけだ。広大なアメリカ大陸を名車ハドソンで横断するディーン・モリアーティとサル・パラダイスさながら、カー・ステレオにお気に入りのカセットをぶち込んで、深夜の国道16号線をあてもなく疾走するのが、僕のルーティンだった。まさに郊外版ひとりオン・ザ・ロードな青春。
 
そんな思い入れたっぶりの青春小説だからこそ、もうこれを読むには年を取りすぎている気がして、絶対に再読はするまいと思っていた。ただ、いざ読み直してみるとやっぱり面白い。矢継ぎ早にあふれ出す言葉のスピード感と、圧倒的なその熱量は、年を重ねた今だからこそ響くところも多い。何気ない車中の会話シーンで、ディーンが当時のヒット曲になぞらえ発する "Now is the time" (今がその時)というフレーズに、思わずハッとさせられてしまう自分がいた。思えば2020年以降、様々な場面で翻弄されることも多かったけど、やっぱり先のことばかりを心配していても良いことなんてないし。今を精一杯楽しむ心がなければ、そもそも未来なんて作れやしないよなと。そんなことを感じながら、今再び路上へと戻れたような気もする。なんて、ちょっとクサすぎるわな俺。まぁひとりオン・ザ・ロード再びってことで、ひとつヨロシク。
 

 

マティス展を観る
 
先日、国立新美術館で開催されている『マティス - 自由なフォルム』展に行って来ました。マティスに興味を持ったのはわりと最近で、、いや待てよ。最近と言っても1998年だから、もう四半世紀前か。北野武監督の映画『Hanabi (1998)』を観たのがきっかけ。劇中で北野監督が描いた絵が登場して、ひとつのキーになってるんだけど、北野監督のインタビューかなにかで「マティスに影響を受けた」みたいな発言があって。それをきっかけにマティスって誰だろう?と興味を持ったのが最初です。それからずいぶん年月が経ったけど、今回ようやく本物の作品を生で観れる機会が訪れたわけです。
 
今回の展示は後年に手掛けた舞台衣装や切り絵がハイライトで、特に終盤、マティスが装飾を手掛けた礼拝堂スペースを再現した空間は神秘的で圧巻でした。ステンドグラスから投影される鮮やかな光彩のコントラストが本当に美しかった。部分的に写真撮影も可能な展示だったので、他の方の迷惑にならない範囲で少しカメラに収めてきました。個人的に一番好きな美術館がこの国立新美術館でもあるので、本当に素晴らしかったです。ご興味ある方はぜひ。
 
それでは今日はこの辺で。
 
adios!
 
高橋徹也