著者であるフラシス・ベーコンは高校の教科書に出てくるレベルの有名な哲学者。
アイドル(偶像)の語源となった「イドラ」でがよく知られている。
以前の投稿でも紹介した。ノヴル・オルガルムはかなり刺激的で面白く、ベーコンの他の本も読んでみたかった。
本書は、第1編「心理について」〜第59篇「噂について(未完)」の59章構成で、随想集というタイトルのとおりベーコンが思ったことを好きに書いている感じ。
別に繋がりなどはないため、気になったタイトルだけ好きに読んでも大丈夫。
私などは第46篇「庭園について」では、庭オタク(?)の筆者が理想の庭についてひたすら語っているだけなので、ほぼ読み飛ばした笑
西洋の建築や文化に興味のある人は参考になったかもしれない。
まず、思ったことが、この時代の人は「嫉妬」について語るが大好きな印象がある。
例えば、スピノザも「エチカ」において
自分と同格だと思うから嫉妬の感情が湧く
ということを言っていた。
あとは、シェイクスピアの「オセロ」では
嫉妬は緑色の目をした怪物で、人の心を餌食(えじき)にしてもてあそぶ。
など述べている。
本書においても嫉妬について取り上げられている。
妬みは最もいやらしい感情であり、最も愚劣な感情である。
第9篇「嫉妬について」
なぜ嫉妬するかと言うと、
他人の特性に到達する望みのない人は、他人の幸運をけなすことによって対等になろうとする。
第9篇「嫉妬について」
と、スピノザと似たようなことを言っている。
そして、嫉妬に似たような話では、
復讐したがる人々は魔女の生涯を送る。彼らは有害であるだけに、その終わりは不幸である。
第4篇「復讐について」
あるいは
自慢する人間は、賢明な人間のあざけりの的、愚かな人間の感嘆の的、取り巻きどもの偶像、自分自身の高言の奴隷である
第54篇「うぬぼれについて」
ここまで、読んで思ったことがひとつ。
自身に善の心があれば、他人の悪を餌食にすることはない。
第9篇「嫉妬について」
では、そのような善の心を身につけるのはどうすればいいのか?
習慣だけが本性を変えて服従させる。
習慣が人間生活の主導者であるため、良い習慣を身につけるように努力する。
第39篇「習慣と教育について」
若いときにから、善い行いを習慣化する心のトレーニングを積まなければならない。
まずは、とにかく勉強だなぁ
生来の自然のままの本性を学問により刈り込む。
第39篇「習慣と教育について」
そして、社会などで経験も積む。
学問そのものは経験によって抑制されなければ、余りにも漠然とした指図を与える。
第39篇「習慣と教育について」
友達も作った方がいい。
真の友人を持たないことが、悲惨な孤独である。それがなければこの世は荒野。
性質や感情が友情に不向きでできている人は、それを野獣から受け継いでいる、人間性からではない。
第27篇「友情について」
そして、善い心を身につけただけではもったいない。善い行動として実行に移す必要がある。
善い考えを実行に移すことは、有利な支配的立場としての権力と地位がなくてはありえない。功績と立派な事業が人間の活動の目的である。
どうやら、仕事など頑張って出世し、社会で活躍する必要がありそう。
何度でもいうが、他人よりまずは自分である。
ベクトルを他人ではなく、自分に向ける必要がある。
自分の精神を鍛えることが何よりも重要である。
そのことが、自分の子どもや社会の後輩達に受け継がれる(だといいが笑)。
と、こう思っておけば、つまらない他人や世間は気にならなくなるんじゃないかなぁ
おしまい。