前回の続きです。

 

私は次の日になると実習開始前に持ってきたチョコレートなどの空き箱をテープで固定したり(教材で遊べないようにして集中するための工夫)、付箋をもらって値段を書いてプライスカード代わりにして空き箱に張り付けたりする買い物SSTの教材づくりを行っていると周囲の職員さんが、

 

「実習生さんが何か作り出している」

 

と不思議そうな目で観察していた。それでも4種類くらいしか当初はなかった。

 

以下の写真のような教材である。

 



あまり最初から難しい設定にして分からずに癇癪を起こしてもまずいのでまずは100円単位単一ですぐに計算できるような方法を使って少しずつ数を増やして最終的に1000円前後の買い物が自分でできるようにするのが私の立てた短期目標である。

 

ある程度数字の理解に関するアセスメントは過去の資料などから得ていて繰り上がりの概念やお釣りの理解は難しそうだったのでこれらが全く発生しない方法で導入することとした。最初は100円の商品が2つ、200円の商品が1つ、300円の商品が1つ、合計700円で設定した。

 

そこで、まずは商品の合計金額を計算してもらい、お給料が500円出たら3つまで選んで買うという練習の流れを試行錯誤ながら組み立てた。

 

この方法を毎日15分繰り返せば確実に上達すると私は読んでいたが実習指導者の中川をはじめとする職員たちは懐疑的だった。

短期目標に向けた実践はこれでいいが、中長期目標の実現に向けての本人のニーズを拾うためには本人とのコミュニケーションは不可欠で「1人暮らしについて」「グループホームでの生活について」どう考えているのかBさんに聞かなければならない。

 

1人で暮らすことは自分の生活を自分でコントロールするスキルが求められるがその意味を理解することも難しいかもしれなかった。そもそも重度の自閉スペクトラム症で療育手帳AのBさんとうまくコミュニケーションが成立するかどうかも分からない。

 

思い切って個別支援計画をぶち上げた私だったがすぐに大きな壁が立ちはだかっていることは分かっていた。

 

話は次回に続きます。