小説「すれ違うふたり」第4話。 | てつさんのアスペルガー症候群奮闘記

てつさんのアスペルガー症候群奮闘記

私は35歳でアスペルガー症候群と診断されました。今までの生き難さがなぜなのか少しずつですが見えてきました。週1回、子の刻に更新されます。

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 このイベントを回り終えたら夕食時になるので居酒屋で夕食を取る。公務員試験でどんな勉強が必要なのかについてマナブくんはよく知っていたので話は弾み、お互いに頑張ろうねと言う話になって女子2人(特にユキコさん)はマナブくんに好印象を持ったらしい。

 

 この後はカラオケボックスに行くことになった。シンジくんとコウイチくんの作戦で部屋の奥にユキコさんとマナブくんを押し込んだ。それを取り囲むようにシンジくんとコウイチくんとノリコさんの3人が座る。

 

ユキコさんとマナブくんは出られなくなってしまった。シンジくんとコウイチくんはノリコさんとしか話をしない。マナブくんも話に入ろうとするが入れてもらえなかった。マナブくんはユキコさんと2人で話をしなければいけない雰囲気が出来上がっていた。

 

困ったマナブくんはユキコさんに声をかけた。どこ出身かとか今どこに住んでいるかとか仕送りはいくらかとかとりとめのない情報から聞き出していく。それからマナブくん自身のことも話していた。マナブくんは時折高校生の時から好きなマッキー(槇原敬之)の歌を披露しつつ何とか場をつないでいた。

 

シンジくんとコウイチくんとノリコさんの3人は話をしたり歌を歌いながらユキコさんとマナブくんの様子も見ていた。ユキコさんはカラオケが苦手らしく歌おうとはしなかった。そんなユキコさんにマナブくんは、

 

「普段はどんな音楽を聴いているの?」

 

と尋ねると、映画音楽という返事が返ってきた。

 

マナブくんはそれほど映画音楽に詳しくはなかったが、アメリカ映画の「Stand By Me」の主題歌(Ben E.King)をユキコさんのために思い切って歌うことにした。マナブくんは女性にメッセージ性のある曲を披露するのは初めてだった。歌詞はもちろん英語だが、中学の時に運動部が嫌で英語部所属だったマナブくんは暗唱できるまで練習させられたので久しぶりでも歌える自信があった。

 

「Stand ByMe」は和訳すると「僕のそばにいてほしい」と言う意味で少し誤解を招く可能性もあるが歌うとユキコさんは意味が分からなかったのか分からないふりをしていたのか、これと言った反応はなかった。その間にシンジくんがこの年に発表された大黒摩季の「夏が来る」の予約を入れていた。マナブくんはノリコさんが歌うのかなとか考えていたが、曲が流れ始めるとシンジくんはマナブくんに歌えという。これはユキコさんとマナブくんにも夏が来るといいねという意味らしい。マナブくんはこの歌はサビの部分しか分からず高い声も出ないのでボロボロだったが歌いきった。

 

ここで時間が来たので解散になったが、ユキコさんとマナブくんは肝心な連絡先の交換をしていなかった。今のようにLINEや電子メールというわけには行かず、紙のメモで交換するような時代だった。シンジくんやコウイチくんはこの2人はいい感じで連絡先の交換も当然しているものと思っていた。

 

                                      (つづく)