著名人が自身の人生を振り返る、日本経済新聞の連載企画「私の履歴書」。
2023年2月は作曲家の村井邦彦さんが登場しました。

本業の作曲のほか、かつてはレコード会社も経営。
赤い鳥、YMO、そしてユーミンこと荒井(松任谷)由実さんらのビッグアーティストを世に送り出した立役者としても知られる村井さんですが、あるとき、ユーミンの話を取り上げた回で、村井さんが、ユーミンの曲で一番好きなのは「雨のステイション」と書いておられました。

ユーミンの曲は、90年代初頭までの作品なら、ほとんど全曲知っている私。
もちろん「雨のステイション」も存じ上げており、村井さんは記事の中で「(村井さんの)母の実家があった高井戸を思い出す。(中略)ユーミンの感性は武蔵野の自然にはぐくまれたのではないかと思っている」と述べています。

ご存じのかたも多いと思いますが、ユーミンの出身地は東京郊外の八王子。
武蔵野というよりは「多摩」というほうがしっくりくる土地ですが、じつは「雨のステイション」のモデルとなった駅が、この多摩地域にあることをご存じでしょうか。
それは、JR青梅線にある西立川駅。
ユーミン自身が、著書「ルージュの伝言」の中で曲の舞台を明かしているのです。

文字通り立川の西にあり、季節の花とビッグイベントの会場としても知られる国営昭和記念公園の最寄り駅でもあるのですが、かつては公園は米軍基地として利用されており、ユーミンがこの曲をリリースした1975年は、まだ「基地」でした。
今では休日ともなると、家族連れや若者などで大いににぎわうこの駅も、当時は「さみしい」というか、基地特有のちょっと猥雑でスリリングな雰囲気も漂っていたと聞いたことがあります。

じつは西立川駅は、私の家からもそんなに遠くない場所にあるのですが、何しろ青梅線は定期券外。
たまに近くを通ることはあっても、青梅線に乗ることは年に数回あるかないか。
乗ったとしても、西立川駅に降りるなんてことは、まずないといっても過言ではありません。

でも十数年前、もうひとつ作っているブログのネタを探しに、私はこの西立川駅に降りたことがあるのです。
気になっていたことのひとつは、「西立川駅の発車チャイムに『雨のステイション』が使われているらしい」という噂。駅で降りて、ホームのスピーカーから流れてくる曲に耳を澄ますと、元歌よりキーは高いですが、サビの部分のメロディが確かに流れてきたのです。
*この曲は期間限定と聞いていましたが、十数年たった現在も流れているようです

さらに駅前には、「雨のステイション」の歌碑もある、とのこと。
当時、案内板に従い駅舎を出ると、公園のゲート手前の植え込みのところに、平成14(2002)年10月に建立されたという歌碑が見えました。

これを見て「なんか興ざめした」という感想を抱いたブログも拝見したことがありますが、私自身は正直、それと気づかなければ見すごしそうなほど、目立たない感じだったので、あれはあれでいいんじゃないかと思いました。
わかる人だけ、わかってくれれば。

季節は6月。

霧が立ち込める風景の中で、別れた人を思いながら電車を待つ少女をモチーフにしたこの歌。
駅メロよりも、もっとしっとりしたトーンの元歌が知りたいかたは、アルバム「コバルト・アワー」や、「SEASONS COLOURS-春夏撰曲集-」などに収録されていますので、聞いてみてください。