データ解析機「トラックマン」は万能測定器ではない? | ジュニアゴルフ アジアジュニアゴルフ協会 吉岡徹治オフィシャルブログ Powered by Ameba

データ解析機「トラックマン」は万能測定器ではない?

アメーバ松山選手も導入したトラックマンのメリットと物足りない部分?

 昨日のニュースで松山英樹プロもデータ解析機「トラックマン」を練習に
 取入れたとありました。タイガーやマキロイも使っているこのデータ解析
 機など新しいものをすぐに導入してさらに上を目指す向上心は流石ですね。

 でもトラックマンを導入すればスイングデータのすべてが分かるというわけ
 ではありません。
  
 すでにキャンプで2年以上使用して数百人のジュニアのデータを分析して
 きた私たちがそのメリットに加えて物足りない部分もご紹介します。

てんとうむし詳細→松山英樹の新兵器 プライベート弾道計測器を導入



アメーバトラックマンで測定出来ない重要な数値とは??

 このトラックマンという機器は、一言で言うと「インパクトの瞬間のクラブ
 の軌道や機能とその後のボールの軌跡や回転等を測定する機器です。

 瞬間とはいってもその前後のクラブの軌道や方向性も測定出来るのですから
 スイングプレーンの解析まで出来るすぐれものです。なのでクラブのフィッテ
 ィングでまずは取入れられ、さらにショーン・フォーリーなどマニアなコーチ
 がいち早くコーチングにも取入れてプロのスイング解析にも使って来ました。

 たとえばヘッドスピードはそこそこあるのに力を伝える効率の悪いこの場合など
 効果的に飛距離アップのアドバイスに使えます。これまでのビデオ解析では、
 アドバイス出来なかった面であり、それがトラックマン導入のメリットです。

 ビデオでも・・・

「クラブの入射角がディープなのでボールに十分な角度がついていない。体のスパ
 インアングルやポスチャーを多少変えて構え、体の突っ込みを抑えてスイング出
 来ればビハインドボールで打てて入射角がシャローになって良い角度でボールは
 上がって飛ぶようになるさ!」

 と紹介しています。マニアな解説ですね。笑 確かに飛距離が飛躍的にアップしま
 した!



 でも実際にこのようなアドバイスをするとこうは上手くいきません。笑

 もし、このようにクラブをダウンブローからアッパーに当てようとすると
 体の右サイドが下がってダイナミックロフトもついてしまってボールが
 ふきあがってしまいます。インパクトロフトも増えてスピン量も増えがち
 です。
 
 そうしないためには手首をハンドファーストにしてクラブフェースを立て
 て当てないといけないのですが立てようとするとこれが難しく、大概は手首
 でクラブフェースを返してフェース面が被ってしまいフックボールにもなり
 がちです。

 当然ですが体のポジションや手首の動きなどは数値化しにくいので修正も難し
 く、現場ではなんとかダイナミックロフト等の数値を見ながら手首の使い方の
 修正を試みたりもします。
 
 このビデオのプロは撮影用に見事に修正していますが、実際はなかなか改善さ
 れにくいのです。





アメーバクラブのフェースが返ってしまう数値は計れない

 なかなか上達しない場合など特に手首を使い過ぎる選手達に対してアドバイス
 したい「クラブのフェースが返ってしまう数値(フェースローテーション)」
 が欲しいのですが、実はこの数値はトラックマンでは測定出来ません。

 私の教え子にドラコンタイトルを目指すばかりにインパクト周りで手首を
 200度以上返していた生徒がいました。
 
 バケツの水をインパクトで一気にひっくり返すような手首や腕の動きでクラブ
 ヘッドを加速させていたんですね!!

 この動きはトラックマンではインパクトの瞬間のフェース面の状態のみが測定
 されその結果「スクエアで問題なし」と?データには良い数値が表示されてい
 ました。

 でも実際はテニスや卓球のラケットのトップスピンのようなヘッドの動きですか
 らボールには強烈な右横回転のスピン(Spin Axis =+22deg)が掛かってしまい、
 ボールは30ヤード右に滑っていきます。さらにこの動きではアイアンでボールが
 フェース面に乗る前にボールは離れてしまい、これも上手く打てませんでした。

 数値は問題ないのにボールが異常な動きをするまさに謎のスイング??

 高速度カメラやビデオでフェースの動きを解析してようやく原因を突き止め1年以
 上もスイングを直している最中ですがいまだにヘッドスピードが戻りません。

 これはドラコンとゴルフは打ち方が全く違う事を学んだ事例であり、トラックマン
 のみを使った指導の限界も感じたのも事実でした。



アメーバフェースのどこに当たったか?という数値も計れない

 また、「ボールがフェース面のどこに当たったのか?」という数値も測定できません。

 ボールの回転や軌跡に影響を及ぼすのはフェース面のどこに当たったのか?が重
 要な要素を占めています。最近のドライバーは曲がらなくなったとはいえやはり
 当たる場所が芯からズレてくると大きくボールは曲がります。

 例えばこの完璧な数値の並ぶMくんの見事なショットですが、実際にボールは右に
 20ヤードも滑って曲がっています。理論上の数値からすればドローボールで飛ん
 いくではずですがこれは本人曰く「少し芯をヒールに外した」という表現でしか分
 かりませんが結果的に芯で打てずにスライスしたようです。

 でもさらに詳しく「実際はどれだけどちらに芯を外れたか?」・・・

 は「スマッシュファクター」と 呼ばれるミート率の数値や「フェーストゥパス」
 と呼ばれる理論上のボールの回転の数値(face to Pass =-1.2)と実際のボールの
 スピン等(Spin Axsis=+4.2)では推測出来るものの詳細は数値ではわかりません。
 
 なのでこのフェースにボールの当たった場所はあくまでもコーチやメカニックなど
 トラックマンを扱う人間の経験と感によってアドバイスされる部分です。

 このへんは私の専門の物理の実験に近いものがあって大変興味の湧くところです。






アメーバ機械はあくまでも自分をデータとして知っておくためのツール
 
 このように飛びに影響する人間の体の動きやインパクトの詳細なデータがすべて
 数値で表されているわけではありませんから「トラックマンのデータ解析こそが
 上達のすべて」と位置づけていいとは思っていません。

 また、ジュニアが自分一人でこれで練習したも数値は毎日変わるものではありませ
 んから3日で飽きてしまうかも知れませんね。

 ジュニアがトラックマンを使用する場合みんなで比べ合って練習するから楽しいの
 であり、それが練習に飽きないいい刺激になればいいのではないかと思っています。

 機械は頼るのではなくあくまでうまく利用するものなのですね。