この日の昼食場所の大市(だいいち)です。予約は3か月前に入れていました。
すっぽんを食べるのは2回目なのですが、この大市の「○鍋(まるなべ=すっぽん鍋)」を食べるのは初めてでした。
京都にある大市は「すっぽん料理」の老舗です。
↓すっぽん料理 大市の地図(六番町・下長者町通)
大市の16代目の店主(堀井真澄氏)が1991年に語ったところによりますと、大市の歴史は下記のとおりです。
・元禄年間(1688年~1704年) : 仕出し屋(煮売り屋)として「すっぽん料理(〇鍋)」を始めた。
・天明年間(1781年~1789年) : 二階に座敷(追い込み座敷=大座敷)を設け、店舗内営業を始めた。
・昭和時代の初期(1928年~1929年) : 追い込み座敷が客の好みに合わなくなったため、店の裏側に個室式の座敷(五部屋)を増築した。 岩崎 信也 (著)「食べもの屋の昭和―伝えたい味と記憶 (新潮文庫・2011年)」を参考にしました。
・2022年12月現在の18代目店主は青山佳生氏です。
大市の個室座敷です。
大市は、江戸時代でも上流階級向きの料理屋であり、利用者は武士が多く、町人の利用者は大店(おおだな)の旦那衆ぐらいに限られていたそうです。 駒 敏郎 (著)「東京の老舗・京都の老舗 (角川文庫・1982年)」を参考にしました。
大市の料理メニューは「○鍋(まるなべ)」の一種類(コース)だけです。
しかも、野菜や豆腐など『すっぽんの味を邪魔するもの』は鍋に一切入れないのが大市の「〇鍋」です。
先付のすっぽん肉のしぐれ煮です。しぐれ煮なので、生姜をきかせた醬油ベースの煮汁で煮たすっぽん肉です。
「大市」のすっぽんは、浜名湖(浜松市西区舞阪町舞阪)のすっぽん養殖の老舗「服部中村養鼈(ようべつ)場」で育ったすっぽんです。
ここからが本料理の「〇鍋」です。
「大市」の○鍋は、調理場で、コークスによって1,600℃以上の高温で一気に炊き上げたものが座敷に運ばれてきます。
大市の土鍋は、大市専用の分厚い信楽焼き(雲井窯・九代目中川一辺陶)の土鍋です。
沸騰している〇鍋から仲居さんが取り分けてくれたスープです。すっぽん肉の出汁に酒・醤油・生姜がブレンドされた濃厚な味でした。
骨付きのすっぽん肉です。大市のすっぽんは、独特な旨味があります。
すっぽんの味は、フグに似ていると思っていたのですが、大市の〇鍋を賞味してみると、フグとは全く違う味でした。
熱々の○鍋は、2度に分けて出てきます。これは2度目の鍋のすっぽん肉です。すっぽん肉は『栄養の宝庫』と言われています。
すっぽん肉を食べ終わった後の、すっぽん雑炊(まる雑炊)です。お餅と鶏卵が入っています。
すっぽん雑炊は、フグ雑炊よりもコクのある味です。これまでに食べた雑炊の中で一番美味しいものでした。
大市ですっぽん雑炊と一緒に食べた季節のお漬物は、西陣に京都本店がある『近為(きんため)』のお漬物でした。
近為は1879年(明治12年)に創業しています。大市と近為の両店舗間の距離は約1kmです。
大市で頂いた、冬の京都らしい『近為』の千枚漬と壬生菜です。
雑炊の一膳目を頂いた後の、残りの雑炊です。これも取り分けて完食しました。
最後に「水物」として季節の果物が出てきます。愛媛県産の高級フルーツ「紅まどんな」でした。
[Ultra-luxury]Ultimate Suppon(Soft-shelled turtle)Cuisine! Japanese gourmet manga"Oishinbo"Volume 3(DELI BALI)
すっぽん料理の「大市」が登場する主な文学作品は下記のとおりです。
志賀直哉『暗夜行路』
瀬戸内晴美(瀬戸内寂聴)『京まんだら』
川端康成『古都』
開高健『新しい天体』
梶山季之『夜の配当』
小島政二郎『新珠』
田村秦次郎『白い望楼』
丹羽文雄『虹の約束』 『魚紋』 『顔』
この他にもあると思います。
市川團十郎白猿さんも、「大市」をよく利用されているようです。
千本出水のバス停から京都市バスで二条駅前に出て、JR嵯峨野線の二条駅から京都駅に向かいました。
ジェイアール京都伊勢丹のマールブランシュで「茶の菓」を購入しました。