奈良ホテル点描 | 鉄道で行く旅

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特異な歴史を持つ奈良ホテルの点描です。
奈良ホテル

1909年開業の奈良ホテルの建築設計者は辰野金吾と片岡安です。開業当初は大日本ホテル(株)の経営でしたが、経営難により1913年からは鉄道院(鉄道省を経て終戦時の運輸省まで続いた)の直営に変わりました。終戦までは、官吏の高等官(大日本帝国憲法の官吏制度の高等官)」以上でないと宿泊できなかったそうです。その時代は、国営の鉄道(院・省)直営のホテルだったという事情もあって、「官尊民卑」のような状態でしたから、ビジター(アウェイ)である民間人は有名企業の重役以上でないと原則として泊まることができなかったそうです。

 

小生は、JR西日本ホテルズの会員(無料で入会できる)です。この会員になるときに、主に使うホテル名を登録しておく仕組みになっています。例えば「ホテルグランヴィア京都」を自分の本拠地ホテルに指定しておくようなことができるわけです。
奈良ホテル

ハーフとまでは行きませんが、小生はクォーター奈良県人?ですので、この「奈良ホテル」を本拠地にしているのです。(笑)
なお、奈良ホテルは株式会社ジェイアール西日本ホテル開発が運営しているわけではなく、株式会社奈良ホテルにより運営されています。これは、JR西日本の出資率が50%で、近鉄系の都ホテル&リゾーツが50%のためです。このため、奈良ホテルはJR西日本ホテルズでありながらも、都ホテル&リゾーツ(近鉄)グループのホテルでもあるのです。インバウンドへの強化を目的に、2018年8月31日付けでJR西日本が近鉄GHDから全株式を取得して完全子会社化しました。

(追記:「JRホテルメンバーズ」への制度移行によりJR西日本ホテルズの本拠地ホテル制度は廃止されました)


2018年6月1日からJRホテルメンバーズに変わりました。(2018年5月追記)

奈良ホテル

宿泊日の翌朝に撮ったものですが、奈良ホテルのティーラウンジ(夜はバー)です。


奈良ホテル

宿泊した部屋です。左の絵が山下新太郎画伯の絵です。

奈良ホテル
旧館のデラックス室(リワードのポイントで宿泊)ですが、懐古調のデザインです。

奈良ホテル

飾りかと思っていたら、現役だったスチームヒーターです。大正時代に暖炉に代わって導入されたものです。

小生の少年時代は、こういう立派なデザインではありませんでしたが、総合病院の病室に入ると、必ずのように、こういうタイプのヒーターが設置されていました。

奈良ホテル

奈良ホテルの浴衣です。


奈良ホテル
洗面所と浴室です。タイルは新しいようですが、天井のデザインと窓のデザインは昔のままのような感じです。

奈良ホテル

2階の階段横の廊下です。


奈良ホテル

奈良ホテルの廊下の手すりにある擬宝珠です。戦時体制下の国家総動員法にもとづく金属類回収令により、元の真鍮製の擬宝珠が撤去されました。そのときに真鍮の擬宝珠の代わりに、奈良の赤膚焼で作られた擬宝珠がこれなのです。

真鍮製擬宝珠の代用品だった陶製の擬宝珠ですが、ここにしかない珍しい擬宝珠であることと、出来栄えが素晴らしいために(大塩正人窯・七代目の作品)、元の真鍮製には戻さなかったみたいです。

奈良ホテル

本館の防火設備です。消火器もありますが、消火用バケツも置いてあります。広義で言うところの「ツルハシ」は震災等で建物が変形しドアが開かなくなったときにドアを打ち壊すなどして宿泊客を救助するためのものでしょうか。「ツルハシ」の形状から言うと、元鉄道省ホテルだけあって保線用の「ビーター」に似ている形です。(少し冗談が過ぎました)


奈良ホテル
2階から見た奈良ホテルの玄関付近です。

奈良ホテル

玄関付近です。

奈良ホテル

暖炉の名残です。鳥居の形が独特ですが、このデザインになった理由が、今では謎だということです。

左上の絵は上村松園画伯の「花嫁(1935年の作品)」です。もちろん複製品ではなく本物です。本物ですので、他県の美術館の「上村松園展」などに貸し出されることもあります。


奈良ホテル

ロビーです。

奈良ホテル
アインシュタインが来日したときに弾いた米国ハリントン社のピアノです。鉄道省のピアノですので、キャスターの車輪が、汽車の動輪のデザインになっているそうです。

奈良ホテルには、このピアノの他に、1922年製のスタインウェイのグランドピアノもあるとのことでした。


奈良ホテル
1935年に国賓として訪日した「満州国(当時)」の皇帝溥儀の宿泊のときに、皇族や国賓などが使う食器が新調されました。そのときに食器類を製作したのは大倉陶園です。

私が、このホテルのレストランで朝食を食べたときのコーヒーカップは石川県白山市のニッコー製でございました。

奈良ホテル
階段の踊り場にある銅鑼です。 昔は食事の時間を知らせたり、空襲警報を知らせるときに使われたということでした。

♪ドラの響きに ゆれて悲しや 夢と散る