女と命をかけてブッ飛ばせ
今回は新東宝も末期に近づいた60年の「女と命をかけてブッ飛ばせ」である。個人的に見やすい状況にあるというだけで選択したのだが、出演者もスタッフもほぼ違う前回の「栄光と驀走王」との共通点がいくつか見られた。
主演は宇津井健で、彼が演じる松崎は東朝新聞で特ダネ原稿を単車で運ぶ記事輸送員である。たびたびのスピード違反で、警視庁にも目を付けられているというキャラ。あのお堅い宇津井が「不良番長」の梅宮辰夫みたいな恰好をしてバイクですっ飛ばすのは、とでも違和感がある。ある日、突然トミ(魚住純子)からスピードドライバー勧誘の手紙と十万円を受取った。松崎のスカウトに成功すれば店が貰えるというトミは、松崎を亜細亜モーターズの黒岩社長(芝田新)に無理に会わせるが、彼は断った。しかし、友人小島(伊達正三郎)の妹絹子(星輝美)に招待された松崎は小島の兄直人(若宮隆二)の研究するスピード・ボートに興味を覚えた。その頃、会社で友人の解雇に怒った松崎は十万円と辞表を叩きつけて退社、意を決して亜細亜モーターズ入りした。
というような展開なのだが、バイク乗りからスピードボートへの転向というのは前回の「栄光と驀走王」の田崎潤(→オートレース)と同じパターンである。ちなみにスピードボートと言っても競艇ではない(使用しているボートは競艇用のもの)。まあ、テストドライバーみたいなものである。
米国のバイヤーが日本のスピードボートの契約に来日した。条件は優秀な研究所。試作ボートに失敗した黒岩は、木村(泉田洋志)に直人の燃料タンクの爆破を命じ、直人はテスト中事故死した。研究所に廻ってボートの残骸を点検した松崎は、焼けたタンクから木村のスカーフを発見する。スピードボート製作に東朝新聞の援助を得た松崎は、小島と協力して直人の遺業を継ぐのだった。
つまり、最終決戦は松崎と木村のスピードボート対決となる。ラストの相手が泉田洋志というのも「栄光と驀走王」と同じなのである。
通常、セリフは多くない泉田が今回はセリフも多く、疑闘も兼ねて大活躍。黒岩一味の人質だった絹子と加世子(三条魔子)がトミによって救出され、その姿を確認すると急に木村は「女を賭けて正々堂々と勝負だ」などと言い出す。女とは絹子のことを指しているのだ。にしても、フルネームで小島絹子って一瞬「小畠絹子」に見える。木村は「折り返し地点に気を付けろ」と近くの陸地に狙撃手がいることを教えるのだった。中々松崎に命中しないので、業を煮やした黒岩が駆け付け自ら撃つと木村に命中。木村のボートは黒岩たち目がけて突っ込んでいき大爆発するのだった。宇津井と泉田は実際にボートの運転練習をしたという。吹き替えもあると思うが、自ら運転しているシーンもあるようだ。
ところで、この狙撃手(と言っても子分の一人)を誰が演じたのか調べてみると(多分)渡辺高光だったようである。いつの間にか「新東宝データベース」というページがあり、顔写真もあったりするので、クレジットされている出演者と照らし合せたところ渡辺が合致したのだ。渡辺と言えば「スペクトルマン」の公害(怪獣)Gメン加賀役でレギュラー出演していた役者で、ヒゲづらのイメージしかなく、新東宝時代のヒゲのない顔は誰だかわからなかったのである。後に、きくち英一らとJFA(JAFではない)と設立するのだ。まあJACとか大野剣友会に類する集団といえば分かりやすいだろう。