一寸法師 | お宝映画・番組私的見聞録

一寸法師

今回も55年の新東宝作品だが、喜劇ではなく怪奇ミステリー「一寸法師」である。知っている人も多いと思うが、原作は江戸川乱歩の小説だ。一寸法師とは本作に登場する小人の男を指している。「小人(こびと)」は差別用語というイメージがある人もいると思うが、「小人」自体は差別用語ではないようだ。逆を表す巨人は球団名を表すくらいに全然差別用語じゃないし。ただ小人の古い表現である矮人などは差別用語になるようだ。昔「おそ松くんチューブチョコ」などを発売していた「コビト」という製菓会社があったが、現在は存在しない。名前の問題ではなく普通に吸収合併され、消えたとのこと。
さて「一寸法師」だが、大蔵時代の作品のイメージだったが、前述のとおり55年なので大蔵前なのである。主演も出ずっぱりな宇津井健かと思いきや、クレジットのトップは二本柳寛である。本作では二本柳が探偵・旗竜作を演じており、宇津井演じる小林章三はライター(のような)ことをやっているようだ。乱歩で探偵といえば明智小五郎で、実際原作も明智なのだが、本作では何故か旗竜作なのである。助手である小林(少年)の名前は使っているのに事情でもあるのだろうか。旗竜作もどこかで聞いた気がすると思ったら、特撮ドラマ「ナショナルキッド」(61年)の主人公の名前と同じである。これは偶然というわけではなかろう。
宇津井演じる小林は、旗との対比もあってか若干単純であまり優秀ではない。犯人と疑われる百合枝夫人三浦光子)に気があり、すぐにかばおうとするところがある。三浦は当時38歳で、個人的にはあまり馴染みのない女優なのだが、それもそのはずで、62年頃に引退し69年に52歳で亡くなっているのだ。46年に米軍中尉と結婚し渡米。戦後の国際結婚の第1号と称されたりしている。まもなく離婚し帰国するが、相手は重婚だったらしい。
百合枝の夫・山野役三島雅夫で丸顔のほぼスキンヘッドが特徴だが、当時はまだ頭髪が結構あったようだ。その娘・三千子役が安西郷子だが、本作では気の強い娘として描かれている。ネタバレになるが、小間使い(要するにお手伝いさん)の小松も彼女が二役で演じている。こちらも実は山野の妾の娘で、被害者と思われていた三千子が化けていた。小松と三千子が口論になり、三千子小松を殺害してしまうのである。三千子は交際していた運転手の蕗谷(国方傳)と家を出たところ、刑務所帰りのストーカー水島丹波哲郎)に付けられて刺殺されてしまう。本作で安西郷子は二度死ぬのだ。
国方傳は字面だけ見ると高齢な人を想像してしまうが、当時23歳の若手である。俳優座養成所2期生で、小沢昭一、菅原謙次、井上昭文などが同期。国方傳(クニカタツタエ)は芸名だが、本名は道三重道という一風変わったものである。他に天知茂旗の助手役、細川俊夫検事役、江畑絢子、池内淳子はどこに出ているかは確認できなかった。池内は最後にクレジットされているが、その他大勢の最後でトリという意味ではない。
一寸法師役は和久井勉。銀座でサンドイッチマンをやっていたという。この後「女吸血鬼」(59年)にも出演している。余談だが、「特別機動捜査隊」の298話「女の館」にも小人の人が出演しており、クレジット上は桃井正彦となっていた。しかし、改めて見ると和久井と細長い感じの顔がよく似ており同一人物かも?と思ってしまった。「特捜隊」は中井義プロヂューサー初め、役者にも新東宝出身者が多く出演していたので不思議はないと思う。確証はないけれども。