森繫のデマカセ紳士
前回と同じく新東宝で55年に公開された作品から「森繁のデマカセ紳士」を取り上げてみる。
タイトルにあるとおり、もちろん主演は森繫久彌である。55~56年の新東宝では「森繁の~」という作品が4本ほど存在する。主演作には必ず付いていたというわけではない。たとえば、本作の半月ほど前に公開された「わが名はペテン師」の主演も森繁である。実はこの「わが名はペテン師」と「森繁のデマカセ紳士」の原作は同じで、人気のラジオ番組「わが名はペテン師」の映画化ということのようだ。というわけで、この二作の原作者(小野田勇、キノトール)を始めとした監督(渡邊邦男)などの主要スタッフはほぼ同じである。しかし、主演者は森繁以外はほぼ異なっているようだ。「ようだ」としたのは、実はこの「わが名はペテン師」の原版は存在しないらしいので、新東宝のデータベースではその改題主尺版「森繁のペテン王」からキャストなどは採録されているという。まあ縮尺版でカットされてしまう役者はいるだろうが、基本的に増えることはないはずである。
さて「デマカセ紳士」だが稀代のペテン師・堀川新兵衛(森繁)は元ストリッパー・浪江(江畑絢子)と一儲けを企らみ、彼女を女子プロレスラーに仕立て上げ、まんまと10万円を手にする。さらに、堀川は彼女を天才舞踏家として売り込むことに成功。各劇場から出演依頼が殺到するのだが……。というような話である。本作のヒロインである江畑絢子は新東宝スターレットの3期生。この年デビューしたばかりなので、メインヒロインとなるのは初ではないかと思われる。ただ、彼女はこの後主要キャストではあるがメインヒロインであることはあまりなかったせいか知名度もそこまで高くない気がする。女優引退後の彼女が世間に注目されたのが丹波哲郎の隠し子騒動である。江畑は新東宝時代に先輩役者であった丹波と愛人関係にあり、後に彼の子を産んでいるのである。関係性は続いていたようだが、その事は丹波夫人や息子の義隆も知っていた。丹波の葬儀にも江畑は息子(森正樹)と共に弔問に訪れている。その際、義隆は気を使って席を外したという。
話を戻すともう一人のヒロイン役が紫千鶴である。(東宝)が付いていたので東宝の女優さんなのだろうが、詳細はわからない。新東宝への出演も本作と「森繁の新婚旅行」(56年)の二本だけのようである。「新婚旅行」ではメインヒロインだったようだが、それが最後の映画出演となったようである。おそらく、その辺りで引退したのだと思われるが、彼女も前回の美雪節子同様役2年という短い女優生活であった。
他の出演者だが、高田稔、阿部九州男、坊屋三郎、江川宇礼雄、花岡菊子、若杉須美子(嘉津子)、荒川さつき、和田孝、鮎川浩、天知茂などだが、天知などは冒頭すぐに登場し森繁と会話するが出番はそれだけ。鮎川や和田も同様だが、鮎川はどの新東宝作品を見ても必ず出演しているイメージ。天知夫人となる森悠子の名もあるが、どこに出ているかは不明。
東京女子プロレスリング協会がプロレスシーンに登場しているが、セカンド(多分セコンドだろう)役の小沢路子が、小太りの女性をダイナマイト・ローズと紹介していた。実際のリングネームかと思ったら、ある映画サイトではダイナイマイトロース役=鍛冶田文子としていたので架空のリングネームのようだ。ちなみに鍛冶田文子の名はクレジットされていない。