のんき裁判 | お宝映画・番組私的見聞録

のんき裁判

今回も大蔵就任前の新東宝作品から「のんき裁判」(55年)を取り上げてみたい。
のんき裁判」というタイトルからは、本作が新東宝創立八周年記念のオールスターキャスト作品だとは予想できないであろう。翌56年には大蔵貢が社長に就任するので、それ以前でのオールスターキャストは本作が最後かもしれない。
脚本は監督も務める早撮りの渡辺邦男と「月光仮面」等でお馴染みの川内康範で、役名は基本的に役者本人の名前である。内容は「のんき裁判所」を舞台に5つの裁判が開かれる。それぞれに裁判長、検事、被告、弁護士、証人が登場する、オムニバス形式の構成となっている。出演者クレジットは左から右にスライドしていく形式で、トップクレジットとなっているのは大河内傳次郎、続いて藤田進となっている。
そもそも新東宝の結成に動いた十人のスターが「十人の旗の会」である。そのメンバーだったのが大河内であり藤田である。同じくメンバーだった長谷川一夫山田五十鈴らは比較的短期間で新東宝を離れたようだが、先の二人と花井蘭子はまだ在籍していたようだ。
第1の裁判が「ハート窃盗罪」。裁判長が藤田で検事が田崎潤という大声軍人キャラコンビとでも言うのだろうか。弁護士が笠置シヅ子で、被告が小林桂樹高島忠夫である。二人が女性にモテ過ぎるといったような罪状なのだが、高島はともかく小林は若い頃からもそういうキャラじゃないだろうと思ってしまった。何故かオネエ言葉を使ったりするし。それぞれの被害者(証人)が長谷川裕見子であり、安西郷子である。安西は当時21歳で、今回の出演者の中では一際可愛らしく見える。このパートでは舞妓の一人として池内淳子が、藤田の娘役で久保菜穂子が登場している。久保のメガネ少女というのも珍しい。
第2の裁判は「恐妻罪」で、被告は丹下キヨ子である。要するに彼女は怖いという罪だ。本件では裁判長は大河内、検事は田中春男に交替している。弁護士は暁テル子だ。
第3の裁判は「時代逆行罪」で、被告は若山富三郎、三浦光子、花井蘭子だが、撮影のため行けないという。ならばと大河内田中が出張裁判をするため撮影所を訪れる。そこでは、三浦監督のもと若山出演の時代劇(清水次郎長もの)が撮影されていた。花井は出番待ちのようだ。助監督は江川宇礼雄天知茂で、次郎長役の鳥羽陽之助が現れないので、若い天知が呼びに行かされるのである。この時点では、スターレット同期の高島久保と大きな差があることがわかる。江川も「ウルトラQ」の一の谷博士の印象しかなかったので、最初は誰だかわからなかった。
話を戻すと鳥羽の代わりに現れたのが、なんと大河内裁判長で得意の殺陣を披露する。そういえば、大河内の時代劇以外の姿というのも初めて見た気がする。検事役の田中春男は「次郎長シリーズ」の常連だ。娘の宇治みさ子高島や天知と同期だが、渡辺邦男を追う形で東映に移籍。しかし、渡辺が新東宝に復帰したので彼女も戻ってくることになる。
「時代逆行罪」を否定するため、三浦監督宇津井健花柳小菊を登場させる。常に生真面目な宇津井とずっと甘い声の花柳のラヴロマンスが展開するが、今度はこの花柳の演技に「悩殺罪」が適用されるのだった。花柳小菊についてよく知らなかったのだが、神楽坂の芸者になるべく半玉となったところスカウトされ、35年に14歳で日活多摩川に入社している。芸名はその時の名をそのまま使っている。戦後も各社に出演しており、新東宝作品への出演は多くはない。56年からは東映の専属となっている。夫は中村竹弥だ。
場面はのんき裁判所に戻り、今度は「悩殺罪」の裁判が開かれる。長くなったので、次回に続く。