サラリーマン物語 新入社員第一課
サラリーマンものと言えば東宝のイメージが強いが、日活にも存在する。それが「サラリーマン物語 新入社員第一課」(62年)である。大学を卒業した塩原(山田吾一)、堀川(桂小金治)、沖野(逗子とんぼ)の三人は製薬会社である太洋化学に入社し、揃って販売課に配属される。同様に配属された美代子(清水まゆみ)に堀川と沖野は一目惚れするが、塩原は並行して内定をもらっていた生活科学研究所の社長(由利徹)の娘・道子(松尾嘉代)が忘れられない。そこで、彼は研究所が製造する新洗剤を自社製品と共に問屋に紹介するのだが、新洗剤が好評で売れ行きが伸びてしまうのだった。
というようなストーリーだが、日活の役者ではない山田吾一が主演である。これは当時、NHKドラマ「事件記者」の映画版を日活でシリーズ化しており、岩見記者役で人気のあった山田を主役に添えたということだろう。新卒の新入社員役なら20代前半が多いだろうが、山田は当時29歳。だが、桂小金治(36)や逗子とんぼ(33)は30を超えていたし見た目もフレッシュマンという感じではない。
小金治は名前の通り元々落語家だったが、映画監督の川島雄三の誘いを受け映画出演したのをきっかけに俳優に転身する。これは年間契約を結んだため落語の時間が取れなくなったためだった。名前を返上しようとするが、師匠の小文治から「その必要はない」と言われ、そのまま桂小金治を名乗っていたのである。日活には61年から所属していた。日活の大部屋役者・桂小かんは俳優としての弟子である。彼も元は落語家だったらしい。
逗子とんぼは三木鶏郎門下のコメディアンだが、当時はそれなりに売れっ子だったようだ。ただ、自分が子供の頃にこの人を見た記憶はない。名前だけは知っているという感じだったが、今回初めてその顔を認識した。本作の出演者クレジットは名前だけでなく、その顔写真付きという親切設計なので顔と名前をすぐに一致させることができる。
クレジット順で言えば、二番手は清水まゆみだが、三番手は青山恭二であった。当時「機動捜査班シリーズ」の主役であったが、こういう作品にも出ていたのである。社長(森川信)の息子・良太郎という役だが、彼も美代子に気があった。取り引き先の社長令嬢との見合いに気が乗っていなかったが、実は美代子がその相手だった。彼女は名を変えて良太郎を調査していたのである。
主役の塩原と結ばれるのは前述の道子なのである。しかし、本作での松尾嘉代の扱いは低くクレジット的にも10番手とかである。当時19歳で、ふつうに可愛いしれきっとした所属女優であったが、三人娘(吉永、和泉、松原)ほどの扱いは受けていなかったようだ。もっとも、このシリーズの次作以降はメインヒロイン扱いになるようである。
他の出演者だが、長門勇、若水ヤエ子、谷村昌彦、杉狂児、千代侑子、大滝秀治など。竜崎勝(当時・高島史旭)はノンクレジット出演している。
監督は井田探だが、この人の作品には本作も含め井田武(後にいだたけ志)という役者がよく出演している。血縁関係はないが実は同じ村で近所の出身だそうで、その縁で出演させていたらしい。ただ、辞める時に挨拶もなかったそうで、今はどうしているかも知らない、と15年ほど前に井田探はインタビューで語っていた。