死の十字路 | お宝映画・番組私的見聞録

死の十字路


前回と同じく56年の日活サスペンスから「死の十字路」を取り上げてみたい。原作は江戸川乱歩の「十字路」で、おそらく日活では初の乱歩作品の映画化であろう。54年に松竹が「怪人二十面相」の三部作を制作し、この56年に東映でも「少年探偵団」シリーズが制作されているが、日活ではこの後も乱歩作品の映画化はほとんどなかったようである。
本作には二十面相明智小五郎も少年探偵団も登場しない。あらすじだが、伊勢省吾三國連太郎)は愛人の沖晴美新珠三千代)との密会を妻の友子山岡久乃)に発見された。晴美を殺そうとする友子省吾は誤って殺してしまう。省吾は死体を車のトランクに乗せて藤瀬ダムに行く途中、トラックと接触事故を起こし、交番で事故の聴取を受けるため車から離れてしまう。一方、真下幸彦三島耕)は恋人の相馬芳江芦川いづみ)の兄良介大坂志郎)に、芳江との結婚の承諾を求めたことから争いとなり、良介ははずみで頭を打ってしまう。バーを出た良介はふらつきながら歩いていき、たまたま止まっていた省吾の車の後部座席に乗り込むが、直後に息絶える。戻って来た省吾は見知らぬ男の死体があるのに驚くが、二人の死体を同時に処分することにするのであった。というような展開だ。
三國は五社協定違反第1号と言われているが、この時期は日活と専属契約を結んでいた。と言っても丸一年くらいで、フリーとなっている(その後東映と専属契約)。当時33歳だが、役柄上50近くに見えるようなメイクをしている。新珠三千代はあまりイメージにないが、宝塚卒業後は日活に入社していたのである。まあ、57年には東宝に移籍するのだけれども。三島耕も太泉映画を皮切りに短期間に松竹、日活、東宝と渡り歩いている。この頃は確かに二枚目感があるが、「特別機動捜査隊」の初期(63年)に数回刑事役で登場するのだが、髪の毛が薄くなり多少太っていたイメージがある。本作にはよく似た名の三島謙も出演している(トラック運転手役)。それらに比べて芦川いづみはまさしく日活の人であったが、本作では出番は多くない。
本作に登場する探偵は南重吉というが、大坂志郎の二役である。何故二役かと言えば、原作でも良介と南は似ているという設定があり、芳江が偶然、兄に似たを見かけたことから知り合い調査に乗り出してくることになるのだ。しかし、は小悪党で真相に辿り着くと省吾を強請ったりするのである。そして彼に殺されるので、本作で大坂志郎は二度死ぬのである。警察関係者は花田警部安部徹)や田辺刑事小林重四郎)が登場。安部も小林も悪役のイメージが強いが、安部は元々は二枚目役であった。小林は戦前の日活で「雲井竜雄」の名で、デビューしている。
本作の脚本は渡辺剣次が担当。渡辺は当時探偵作家クラブの会員で、原作の原案を書いた人なのである。わかりづらい日本語だが、要するに第一稿を書いたのは渡辺だということである。着想やトリックも彼で、乱歩がそれを自分になりに書き直したのだという。渡辺はNHKに勤務し、「私だけが知っている」の台本なども手掛けていたという。映画脚本は本作以外には「夜の牙」(58年)、「危うしGメン暗黒街の野獣」(60年)がある。