太陽西から昇る
前回の「花嫁は十五才」で監督デビューした江崎実生が次に監督した作品が「太陽西から昇る」(64年)である。「西から昇ったおひさまが東へ沈む~」という唄で始まるのはアニメ「天才バカボン」だが、本作は別にコメディではないし、アホな映画でもない。終始シリアスな雰囲気に包まれている。
正にこれを書いている今日(3月7日)にスカパーで放送されたようだが、自分はそのチャンネル(衛星劇場)には未加入なので(高いから)、YouTube経由である。違法動画ではなくちゃんと公式(つまり日活)で公開しているやつである。
主演は浅丘ルリ子だが、その相手役は長谷川明男なのである。長谷川といえば大映のイメージだが、この時点ではまだ未所属だったのかもしれない。子役としてデビューし、テレビドラマに数本出演してから東宝の「林檎の花咲く町」(63年)で映画デビューしており、恐らく本作が初の日活出演と思われる。突如として準主演に抜擢された経緯は不明だが、長谷川も和田浩治と同様に当時は石原裕次郎に似ていると言われていたのである(もちろん顔がシュッとしていた頃)。実は本作では石原裕次郎邸が撮影に使われているという。プール付きの豪華な家が登場するがそこがそうらしい。裕次郎本人は出ないが似た奴を出そうとということになったのかも。
さて「太陽西から昇る」だが、大学生の康子(浅丘)は小野寺建設の社長令嬢、亜紀(槇杏子)の家庭教師を務めることになった。小野寺邸は父・重樹(芦田伸介)と女中・シノ、そして居候の日下浩(長谷川)という青年の四人暮らしだった。浩の父は小野寺建設の経理課長をしていたが、汚職事件の渦中に巻き込まれて自殺、そのため浩は小野寺に引き取られたのだった。浩は大学をさぼり昼は庭のプールでゴロゴロし、夜は仲間の溜まり場“ブルーマンディ”で憂さを晴らしていた。康子は何故かそんな浩に惹かれていくのだった。
浩の友人である久我(中尾彬)、仲間の一人で浩にベッタリなノン(設楽香乃)、店のバーテン・ガン(平田大三郎)、黒田組のヤクザ権田(草薙幸二郎)らが主な登場人物である。中尾は61年に日活ニューフェイスとして採用されながら翌年には退社。この時は民藝の一員だ。平田も60年代の日活作品を見ていない人には馴染みの薄い役者であろう。それよりも浅丘以外の若い女性として出演している槇杏子、設楽香乃はもっと馴染みがないだろう。槇は本作では高校生役だが、恐らくそのぐらいの年齢だったと思われる。映画出演はどうやら5本程度で記録上ラストなのは、やはり江崎が監督の小林旭主演「女の警察」(69年)である。こちらではホステスの役である。設楽も年齢とかは不明だが、読者モデル出身で、映画出演は本作含めて2本だけのようだ。もう1本は松竹なので本作が唯一の日活映画出演作となる。本作ではずべ公のような役だが、実際はバレエをやったりピアノをやったりの総立ちのいいお嬢様らしい。彼女の弟は当時の人気子役だった設楽幸嗣である。
久我、ノンと相次いで浩の前で不慮の死を遂げ、父の死は自殺ではなく小野寺の差し金によるものと知った浩はニューヨークへ行こうとしていた小野寺を殺害する。二か月後、逮捕された浩が小菅刑務所に移送されることを知った康子はその塀の前で護送車を待っていたが…。
当時の「映画芸術」でベストテン第1位に選出されたという。おしゃれな画面づくりで専門家が好みそうな作品ではあるだろうと感じた。客が入るかどうかは微妙な気がするけれども。