あひるヶ丘77 | お宝映画・番組私的見聞録

あひるヶ丘77

ついでなので、クレージーキャッツのメンバーが主役を担ったドラマを取り上げてみたい。
クレージーと言えば、ハナ肇、植木等、谷啓が中心で、犬塚弘も第4の男として大映で主演作が撮られたりしたが、残る安田伸、石橋エータロー、桜井センリは基本的に脇役である。
しかし、その中で桜井センリが主役を演じたドラマが存在する。それが「あひるヶ丘77」(68~69年)である。桜井はメンバー中最年長(26年生まれ)なのだが、グループへの加入は七人目つまり最後である。石橋エータローが結核で休業を余儀なくされた為。代理として同じピアニストの桜井に白羽の矢が立ったのである。しかし、通常のバンドマンが月給4万程度の時代に、桜井は18万を得ていた高給取りだったので、植木は反対したが、ハナが強く推すので本人に確認したところ「ああいうことを一度やってみたかったんですよ」と快諾したのである。前述のとおり26年生まれだが、メンバーバランスが考慮され公称は30年生まれということになった。その後、石橋が復帰してもそのまま残ることになったのである。
そんな桜井の恐らく唯一の主演作となったのが「あひるヶ丘77」だ。原作は「仙人部落」や「ヒゲとボイン」でお馴染みの小島功の漫画である。原作は61年から87年まで長きにわたって「週刊サンケイ」(現・SPA!)に連先されていた。都内の2DK団地・あひるヶ丘に住む、マロニエ商事勤務の係長の夫婦と子供というサラリーマン一家を中心に、その周囲・近所・会社などを舞台に繰り広げられる日常を描き、時にお色気も盛り込んでいたホームコメディである。
63年に藤田まこと、姫ゆり子でラジオドラマ化されていたが、ドラマ化は今回が初だった。制作はフジテレビ、東映で、主役の団野九平桜井が抜擢され、妻・百合子広瀬みさ息子・太平下沢広之というキャスティング。下沢は現在の真田広之である。役柄は不明だが、安田伸石橋エータローも出演しており、クレージーのじゃない方が三人揃った形である。
奥さん役の広瀬みさだが、大映15期ニューフェイスに合格し、大映演技研究所で学んだようだが、大映作品に出演した記録はない。俳優より先に63年に歌手デビューしているのである(広瀬美砂名義)。女優デビューは日本初の刑事ドラマ「ダイヤル110番」(57~64年)の335話は「死のタイピング」となっている。映画出演はほぼ日活作品で、大映には入社しなかったということだろう。本作の直前には竜雷太主演の「でっかい青春」(67~68年)でヒロインとなる国語教師を演じていた。69年に結婚して引退しており、短い芸能生活であった。
他のキャストもレギュラーかゲストかは不明だが、清川虹子、大原麗子、山城新伍、桑原幸子、園佳也子、伊藤慶子、斉藤浩子、潮健児、春川ますみ等である。明らかにゲストとされているのが、小川宏、益田喜頓、楠トシエ、花園ひろみ、曽我町子、谷幹一、南利明、小林千登勢、松山英太郎などである。
桜井と広瀬がヂュエットしている主題歌入りのオープニング映像が『東映TVドラマ主題歌大全集1 現代劇篇』に収録され、自分もそれを見たことがあるが、逆に言うとそれ以外は見たことがない。タイトルバックも小島功の絵をベースにしたアニメであり、中の映像に関しては一切見たことは無い。実際、東映チャンネルでも一度も放送されたことはなく。フィルムが存在しているかどうかも不明である。、