十手無用 九丁堀事件帖
今年に入ってからは、ここで取り上げたことのない(はず)の時代劇を取り上げたきたが、今回のはやったことがある。もう10年くらい前だよな、と思っていたら4年前だった。当時と違うのは、2話分だけだけど見て書いたので、少しは違ったことが書けるかもしれない。
というわけで、高橋英樹としては異色なドラマ「十手無用 九丁堀事件帖」(75~76年)である。何が異色化と言えば、本作は高橋版「必殺」なのである。だから、高橋英樹にしては斬る人数は少ないのである。この当時は本作や「影同心」「長崎犯科帳」など必殺の亜流番組が登場していた。結局、本家には叶わなかったと思うのだが、印象には強く残っている。
英樹扮するのは元同心の榊夢之介で、彼を中心にそのグループは既に結成されている。本職は屋根職人の鉄平(桜木健一)とその妹おくみ(栗田ひろみ)、年老いた女形の菊造(木田三千雄)、寡黙なヒゲ男・マサ(下之坊正道)、そして元は盗賊で現在は植木屋のからくり仁左衛門(片岡千恵蔵)である。ちなみに、千恵蔵の本名は植木正義だ。この中ではおくみはサポート役で、マサはめったに殺しには参加しない。記憶では3~4回程度だったような。何のためにいるのかよくわからない。
他にもレギュラーはおり、夢之介の元同僚である秋山久蔵(深江章喜)、メンバーのたまり場である飯屋の伝八(桂小かん)、女金貸しのおしん(児島美ゆき)、15話から登場する芸者おさよ(丘さとみ)など。深江や桂小かんなどは英樹とは日活繋がりであろう。丘さとみは東映のお姫さま女優の一人で、東映ニューフェース2期生。高倉健や今井健二が同期となる。65年に結婚して引退したのだが、75年に離婚し女優に復帰したばかりの頃である。
第1話のゲストは真野響子、柴田侊彦だが、メイン悪役は汐路章でピンでクレジットされており、中々ないことである。汐路を頭に盗賊15人くらいだろうか。菊造とマサは一人づつで、鉄平が四人くらいで、後は夢之介がぶった斬る。ちなみに鉄平の殺し技は小判投げで、のどを切り裂くというもの。後で回収するのだろうか。江戸の後期でも1両は3~5万円程度の価値はあったようなので。
2話では悪役も川辺久造、浜田寅彦、中井啓輔、近藤宏、横森久と名のある役者がずらり。1話では殺しに参加しなかった仁左衛門が賭場で、毒針が飛び出す仕組みの煙管入れで、近藤と横森に針を討つ。首に刺さった近藤は数分平気だったのに、手の甲に刺さった横森がすぐに苦しみだすと同時に近藤も苦しみだすのだった。残る三人は座敷の一室で、鉄平は何故か天井から川辺の御猪口に毒を垂らすのだが、気づかれてしまう。しかし夢之介が現れ、「貴様らのような悪党には十手無用」と三人を斬る。菊造もいたが、逃げようとした中井の前に立ちはだかっただけ。鉄平と菊造は何しに行ったのか謎であった。
前述のように2話まで改めて見ただけで、残りはほぼ忘れているが、4話のゲストを見ると金田龍之介、今井健二、中田博久に加え、小田部通麿、有川正治、山口幸生の名が並ぶ。「仮面の忍者赤影」の第2部卍党編でその卍党忍者を演じていたのが小田部、有川、山口だ。前述の汐路は「赤影」では、1,3,4部にそれぞれ敵役で登場している。ちなみに、その主演であった坂口祐三郎(当時は徹)は11話、白影役の牧冬吉は7話、甲賀幻妖斎役の天津敏は10話にゲストで出演している。