天を斬る  | お宝映画・番組私的見聞録

天を斬る 

用心棒シリーズ 俺は用心棒」の後番組となったのが「天を斬る」(69~70年)である。
本作からこの時間帯(NET、月曜夜8時)はカラー放送となっている。出演者は前作までの栗塚旭、島田順司、左右田一平で変わらないのだが、人物設定は用心棒でも新選組でもなく、何とお役人なのである。
島田は京都東町奉行所与力・桜井四郎、左右田は京都西町奉行所与力・権田半兵衛、そして栗塚は元江戸講武所頭取・牟礼重蔵となっており、彼等三人が幕末の京都を舞台に公儀の密命により、悪人を取り締まるという内容になっている。「非常火急の場合、各自の判断でこれを処理すべし」という権限、つまり斬っても構わないということである。一貫してアウトローを主人公としてきた結束信二が、ある意味王道な時代劇を描いたということになろうか。ただ本作は用心棒シリーズでも新選組関連でもないので、意外と知られていないのでは、と思っていしまう。
栗塚演じる牟礼の経歴である江戸講武所とは、幕末に幕府が設置した武芸訓練機関である。その「頭取」だったという設定だが、今や銀行の社長にあたる人物を表すくらいしか使われないが、幕末や明治初期は様々な機関の名称に使用されていたようだ。ただ、講武所においては、上が総裁で、各部門に師範、教授方が置かれていたとあり、頭取の文字は出てこないが、まあ正確なところはわからない。
その牟礼が江戸で何かをやらかし閉門の身であることは明かされるが、何をしたのかは不明だ。今までのような無口なキャラではなく、他の二人と違い江戸から来たばかりで顔を知られていないことも武器になる。桜井は堅物で正義感が強く、権田は万平に近いキャラで刀を抜かずに戦う。彼等に加え、レギュラーとなるのが、用心棒シリーズではお馴染みの三人。香月涼二演じる西町奉行所の同心・大沢孫兵衛小田部通麿演じる東町奉行所の目明し・万五郎、二話からの登場になるが、西田良演じる無宿人の百太郎である。
第1話のゲストは前作でも初回のゲストだった桜町弘子。冒頭でうどん屋を開く場面があるが、それから30分以上出てこない。やはり序盤で西町の目明し(波多野博)が御用盗の浪士に斬られて命を落とすのだが、その女房が桜町だったのである。その事件の犯人たちは三人によって成敗されるが、桜町は亭主の後を追っていたという空しい結末だ。
第2話でも冒頭で京へ向かう旅の父娘(柳川清、桂麻紀)がいるが、その後出てこない。刀剣屋で桜井は同僚である井上永井秀明)とその息子に会うのだが、その夜、井上親子の首なし死体が発見される。その犯人の浪士たちの居場所である旅籠を突き止め牟礼らが乗り込むのだが、浪士の一人(蔵一彦)が旅籠の客を人質にする。その人質が冒頭の父娘だったのである。娘が背後から浪士を押さえつけ、牟礼が浪士に一太刀浴びせるが、浪士が倒れ込む際に娘は斬られてしまうのだった。二話見ただけなのだが、基本的にこういう空しい結末を迎えるのだろうなという気がした。
ちなみに、OPの歌唱は栗塚、島田、左右田の三人が担当している。結構、上手である。