待っていた用心棒 その2 | お宝映画・番組私的見聞録

待っていた用心棒 その2

前回に続いて「待っていた用心棒」である。
前回のような事情により急遽作られた第1話が「剣を抱いた十人の客」である。以下、ネタバレ。
とある城下の旅籠に十人の浪人が集まってくる。九人は二階の大部屋に通され、その中の一人が島田順司演じる「捨て犬」だ。ちなみに他の八人は河上一夫、伝法三千雄、月形哲之介、山本弘、平沢彰、波多野博、宮城幸生、五里兵太郎だ。いずれも「くに殿」の依頼で、数両の手当を条件に集められたものだった。八人は仲間意識を持つようになるが、「捨て犬」だけは離れたところで背を向けて寝転がっていた。そして、十人目としてやって来たのが伊藤雄之助演じる「野良犬」だった。彼のみすぐ向かいの小部屋に一人で入ったのである。
一階には旅籠の主人と女房とその子供、番頭と女中がいるが、客として泊まっていたのが左右田一平演じる品田万平である。旅籠の子供が怪我をしたので、万平はその治療にあたっていた。浪人たちを集めた小島という侍は中々現れず、じびれを切らした野良犬捨て犬を除く八人が小島の屋敷に行ってみようと部屋から出たところに現れたのが高橋俊行演じる「狂犬」である。狂犬は小島某が死に、計画はすべて水に流れたので、そのまま解散してくれという小島の最後の言葉を伝えに来たのであった。その後、狂犬は一階の台所に行き、酒を飲み始める。これで主役の四人がその旅籠に集結したのだが、それぞれ別の場所にいて顔を合わせないのがミソ。
この話は9割がた旅籠の中で繰り広げられる密室劇のようになっているが、後の1割が前述の小島某の屋敷である。屋敷には彼の妹(佐々木愛)が一人で居たのだが、その前に謎の浪人(中野誠也)が現れる。彼もまた、小島の死に際に立ち会い、妹を藩外に脱出させて欲しいと頼まれていたのである。
旅籠の八人の浪人は居る理由もなくなり、三組に分かれて旅籠を出て行こうとするが、最初の三人(河上、伝法,波多野)は豹変し、金品を奪おうとする。そこに野良犬が立ちふさがり、二人を斬り捨てる。残る一人は子供のいる部屋に逃げ込むが万平が現れ浪人を投げ飛ばす。一方で二人(月形、宮城)は台所で女中と番頭に襲い掛かるが、傍にいた狂犬に斬られる。二階の残る三人は行がけに捨て犬の高価だという刀を奪おうとするが、察知した彼にあっという間に斬られてしまうのだった。
夜が明けると、主役の四人は一人ずつ旅籠を出ていく。結局、それぞれ一度も直接顔を合わせることはなかったのである。次回が初顔合わせする話なので、ここで会うわけにはいかなかったのである。首謀者の「くに殿」も小島某も画面に登場することはないという、非常に変わった構成の話だと感じたので紹介してみたのだ。
第五の浪人として「俺は用心棒」でもセミレギュラーだった中野誠也が登場するが、彼もレギュラーかと当時思った人もいたのではないだろうか。あくまでも今回のみのゲストだ。
浪人たちは決して悪人というわでけはなかったのだが、最後に魔がさして斬られてしまったという感じだ。
目立つのは月形哲之介だろうか。名前が示す通り月形龍之介の息子だが、東映の大部屋俳優である。悪人にしか見えないし。膨らんだ頬はどうやら宍戸錠と同じで、シリコンを入れる手術をしたものらしい。