めくらのお市 | お宝映画・番組私的見聞録

めくらのお市

新年である。今年は予告どおり、とりあえず1つの番組(あるいは映画)を取り上げるスタイルで行きたいと思う。で、新年一発目に全くふさわしくないであろう「めくらのお市」(71年)である。
実は5~6年前に取り上げたことはあるのだが、その時は全く見たことのない状態で少ない情報から記事にしたのだが、今回はその1話と2話を見ることができたので、改めて挙げることにした。そのタイトルが仇となり地上波は勿論、衛星波でも放送が難しそうである。ただ、映画版が4作品あり、そちらは衛星波で放送されたことがあるようだ。 「めくら狼」という映画も放送されたことがあるし。
原作は「週刊漫画TIMES」に連載していた棚下照生「めくらのお市物語」。タナカテルオと読み、本名は普通に田中輝夫と書く。元々は少年漫画の人で、寺田ヒロオを上京に導いたのも彼だという。60年代後半に大人向け漫画に転向し「旅がらすくれないお仙」「ハンターお竜」「モナリザお京」といった女性を主人公とした剣戟がいずれも映像化されている。ただ、この時代の大人向け漫画を入手するのは中々難しいと思う。自分もこの時代は子供だったので、棚下の作品を見たことは一度もないかもしれない。
前述のとおり、映画版4本の後、ドラマ化されたのだが、放送時間は月曜夜7時から7時半まで。夜10時くらいからと思っていたが、ゴールデンタイムの放送とは意外。そのせいか割合明るいタッチで描かれている。主演は映画版から一貫して松山容子で当時34歳。57年に松竹からデビューするが、59年辺りからテレビにも顔を出し始め、60年に「琴姫七変化」の主演に抜擢される人気を得た。このスポンサーが大塚製薬で松山を大塚の顔として起用し始めた。ボンカレーのパッケージや琺瑯看板はお馴染みであろう。
ストーリーだが、お市の母おとよ(有沢正子)はお市が小さい頃に盗賊に連れ去られる。その際に落雷があり、お市は視力を失った。以来、彼女は母を探して旅を続けているのである。レギュラー陣だが、旅に同行するのが鈴木やすし(とちりの三次)と少年・矢崎知紀(ちょん松)で、コミカルなやり取りで雰囲気を暗くさせない。そして同行というわけではないがいつも行く手に現れる浪人・藤岡弘(桧左近)もレギュラーのようだ。ここで注目なのだが、本作のスタートは71年4月12日で、「仮面ライダー」のスタートも同じく4月3日なのである。まあ全部撮り終わってから放送開始というケースもあるが、普通に考えると両作を掛け持ちしていたということになる。ご存知のとおり、藤岡は「ライダー」の撮影中に大けがを負い約10カ月の休養を余儀なくされた。10話辺りで一時降板となり、14話から佐々木剛の登場となっている。並行して出演していたとすれば、当然「お市」の方も序盤で降板したと思われる。テレビドラマデータベースの出演話数情報からは鈴木やすしも13話で降板し、14話から曾我廼家一二三が登場したように思われる。そういえば、矢崎知紀は「仮面ライダー」で、復活した藤岡と後に再会することになる。藤岡と松山は、共に松竹出身で同じ愛媛県出身という共通点がある。

第1話のゲストは丹波哲郎平手造酒を演じ、お市に剣を教えたりする。お市の武器は勝新の座頭市と同じ仕込み杖だが、基本目を閉じている勝新に対し、松山は目を見開いたままである。視線を動かさないことで見えないことを表現している。長く剣戟をやっているだけあって殺陣には定評もあった。
悪役は第1話は玉川良一で、2話は上田吉二郎とどこかコミカルな役者を使っている。ケーシー高峰なども登場し、殺伐となりすぎないようにしているようだ。
ちなみに、本作放送直前に松山と原作の棚下は結婚している。「くれないお仙」も松山の主演だし、映画版の「お市」に棚下が出演したこともある。ちなみに年齢差は3つ(棚下が上)で、バランスも良かったようだ。