加藤剛の出演映画 その2 | お宝映画・番組私的見聞録

加藤剛の出演映画 その2

引き続き加藤剛である。
64年の出演映画は松竹作品が2本。まずは有吉佐和子原作の「香華(こうげ)」である。脚本・監督は「死闘の伝説」と同じく木下惠介だ。上映時間3時間20分という大作である。舞台は明治から大正にかけて、主演は岡田茉莉子で当時31歳。彼女演じる朋子の少女時代から60代まで描かれるので、幼少期は子役の子が演じるだろうが、いつの時代から本人が演じたのだろうか(未見なので)。まあ女優が30過ぎて10代の女学生を演じることは珍しくはない。その母親役が当時40歳の乙羽信子。岡田と9歳しか違わないが、乙羽はどちらかというと老けて見えるタイプだと思う。岡田も若く見えるタイプではないけれども。さらにその母親、つまり岡田から見て祖母の役が田中絹代(当時54歳)である。岡田演じる朋子は17歳で芸者になり、やがて士官学校の学生である江崎(加藤剛)に出会いって恋に落ちる。多分、加藤の方が年上の役だと思うが当時26歳で、岡田より若い。結局、二人は結婚できず別れ加藤演じる江崎は奈良岡朋子と結婚。二人の間の息子役が田村正和と松川勉である。他の出演者は杉村春子、岡田英次、宇佐美淳也、菅原文太、長山藍子、三木のり平等である。「香華」って初めて聞いたタイトルだったが、映画化はこれ1回だが、テレビ化は過去に3度もされている作品だった。
もう1本は山本周五郎原作の「五瓣の椿(ごべんのつばき)」。天保年間の江戸で連続殺人事件が起きる。現場には椿の花びらが落ちており、若く美しい娘が目撃されていた。というようなお話で、主演は岩下志麻。どうやら一人で五役を演じるようである。この事件を追う奉行所の与力が加藤剛である。他の出演者は早川保、左幸子、西村晃、伊藤雄之助、小沢昭一、田村高廣など。本作も映画化はこれ1回のようだが、テレビドラマ化は過去に3度されている。
65年になり、松竹映画がもう1作。文芸作品への出演が続く加藤剛だが、「獣の宿」は娯楽時代劇の部類である。監督・脚本が五社英雄(柴英三郎が共同脚本)で、主演は平幹二朗だ。五社、平、加藤とくれば、「三匹の侍」の顔ぶれである。
話が前後するがドラマ「三匹の侍」の第1シリーズは63年10月~64年4月にかけて放送。この時のメンバーは丹波哲郎、平幹二朗、長門勇であったが、64年10月からの第2シリーズから丹波に代わって加藤が入ったのである。「獣の剣」は64年9月、つまり1、2シリーズの間に公開されたわけで、加藤剛起用の予告みたいなものだったかもしれない。共演は岩下志麻、天知茂、東野英治郎、田中邦衛、菅貫太郎、木村俊恵、加藤武などで、カトウタケシ対決があるかもしれない(加藤剛の本名の読みはタケシ)。「三匹の侍」の映画版も64年5月に公開されているが、こちらはまだ丹波が出演している。
「三匹の侍」は第6シリーズ(68~69年)まで放送され、加藤剛をこれで認識した人も多いと思われる。
65年はもう1本、東映の「逃亡」である。これが初の東映ということになるのだろうか。戦時中、上官の命令で捕虜の処刑に立ち会ったことで、戦犯裁判を受けることになった加藤は裁判が正当性を欠いていることなどを聞かされて千葉真一や原田清人らと逃亡。その間に婚約者だった佐久間良子と結婚する。開拓村に逃げ、一時は平和な時を過ごすが、原田や千葉が捕まり、夫婦の元にも警察の手が迫っていた、というような話。加藤剛が出演するとどの作品も社会問題を提起するような内容になる気がする。共演は江原真二郎、東野英治郎、西村晃、亀石征一郎、北村和夫など。