堺正章の出演映画 その5 | お宝映画・番組私的見聞録

堺正章の出演映画 その5

もう一度、堺正章である。
70~71年にかけてだが、血筋といのだろうか堺は東宝のコメディ映画4本で主演を務めている。
まずは「喜劇ドッキリ大逃走」(70年)。資料の少ない映画のようで、ウィキペディアには日活となっていたりするが、東宝(東京映画)の制作である。本作には相方の井上順も出演。ただし当時は井上順之(じゅんじ)を名乗っていた。しかし「じ」を付けたら「痔」になったという理由で、短期間で元に戻している。「お世話になりました」「涙」などのソロでのヒット曲はこの順之時代に出したものである。共演は大矢茂、范文雀、てんぷくトリオなど。大矢茂は加山雄三率いるザ・ランチャーズのギタリストであったが、70年になると単独で若大将シリーズ等に顔を出し始め、年明け71年の「若大将対青大将」では二代目若大将に指名までされているのだ。しかし彼単独の若大将が制作されることはなく、75年に三代目の草刈正雄が登場する。それどころか「女房を早死にさせる方法」を最後に姿を消してしまった。74年の公開だが、実は71年には完成しており数年だがお蔵入り状態だったらしい。つまり、若大将指名からまもなく役者を引退してしまったと思われるのだ。「ドッキリ大逃走」のもう一つの見どころはてんぷくトリオ(三波伸介、戸塚睦夫、伊東四朗)の出演だ、戸塚が早くに亡くなった為、三人揃っての映画出演はほとんどないのである。
ここから三本は渡辺プロ制作、東宝配給の作品が続く。堺自身は渡辺プロの所属ではない。
「喜劇 右むけェ左!」は、70年の大晦日が公開日となっているので、翌71年の正月映画ということだろう。本作に関しては犬塚弘が主役のサラリーマン係長で、その部下(堺、田辺靖雄、なべおさみ、大橋壮多)と自衛隊に体験入隊するというお話。自衛隊の教官役で井上順と左とん平が登場、他に小松政夫、島かおり、吉沢京子、山東昭子、いかりや長介など。犬塚は大映での主演作はあったが、クレージー映画のお膝元である東宝での単独出演自体が珍しい。大橋壮多はちょいデブの役者(本作での役名は太井)で、時代劇出演が多い。たまに善人もあるが悪役の方が多く特に「必殺シリーズ」での悪役が印象に深い。併映は植木等、加藤茶が主演の「日本一のワルノリ男」。
年明け71年、スパイダースも正式に解散し、名実ソロになった堺だが、前述のとおりナベプロ制作作品の主演が続く。
「喜劇昨日の敵は今日も敵」では、堺のソロデビューシングルである「さらば恋人」が挿入歌として使用されるが、おそらくこれが堺の最大ヒット曲であると思われる。共演はなべおさみ、吉沢京子、小松政夫、田辺靖雄、大橋壮多、いかりや長介など前述の「右むけェ左」と同じ顔ぶれが多く、小松や大橋は役名も一緒である。他に紀比呂子、范文雀、平田昭彦、大泉滉などで、布施明、ゴールデンハーフが歌のゲスト的に出演。併映は植木等、加藤茶主演の「だまされてもらいます」。
「起きて転んでまた起きて」は71年の大晦日公開。堺、なべ、吉沢京子、小松政夫、いかりや長介等に加え、安倍律子、大原麗子、桑原幸子、和田浩治などが出演している。併映の「日本一のショック男」はクレージー映画の最終作だが、やはり主演は植木と加藤茶でハナ肇、桜井センリ(起きて転んでの方に出演)は出演していない。