萩原健一の出演映画 その3 | お宝映画・番組私的見聞録

萩原健一の出演映画 その3

つづけて萩原健一である。73年は「股旅」の他に、岸田森の項でも触れた「化石の森」で主演となっている。
ヒロイン役は本作が映画デビューとなる二宮さよ子で、萩原の母親役が杉村春子である。二宮は設定では萩原と同級だが、実年齢では2歳上の当時25歳。文学座では杉村の部屋子として身の回りの世話などをしていたという。他の共演者は日下武史、浜田寅彦、八木昌子、田中明夫、岸田森などで、監督が篠田正浩ということもあり、その妻である岩下志麻も萩原の姉役で出演している。
テレビの方では「太陽にほえろ」を降板し、時代劇「風の中のあいつ」で主演。黒駒勝蔵という通常「清水次郎長」では悪役として描かれる侠客を演じている。その子分が前田吟、下條アトムで、テンプターズ、PYGの同僚であった大口広司も子分の一人(大岩)として加わっている。逆に次郎長が悪役で米倉斉加年が演じていた。番組主題歌を沢田研二が歌っている。
この時期(73~74年)、並行して「くるくるくるり」というドラマでも主役を演じている。人力車屋を舞台としたホームコメディで全20話だが、知っている人は少ないのではないだろうか。事実、自分も知らんかったし。共演は伴淳三郎、島田陽子、三ツ矢歌子、香山美子、宍戸錠、ちあきなおみ、細川俊之、研ナオコ、佐藤蛾次郎、小松政夫などが出演していた。沢田研二も1話と2話のみ友情出演している。
もう一つ知られてなさそうなのが「新宿さすらい節」(74年)。これも主演で、若き特ダネ記者を演じている。58年の新宿が舞台で、先輩記者(岩下浩)の変死をきっかけに、裏社会に深入りしすぎて凶弾に倒れるといった話のようだ。共演が中野良子、二谷英明、星由里子、緑魔子、田口計、渡辺文雄、下川辰平など。本作は1クールのドラマだが、その最終話の前週に始まったのが「傷だらけの天使」(74~75年)である。この番組が伝説化したことにより、ほぼ同時期の「くるくるくるり」や「新宿さすらい節」の影が薄くなってしまったようである。まあ、CS等で(たぶん)放送されていないこともあると思うが。
このようにドラマで忙しい時期であったせいか、映画は74年は「青春の蹉跌」一本だけである。ロマンポルノで手腕を振るっていた神代辰巳の初の一般映画監督作だ。共演は桃井かおり、壇ふみ、河原崎建三、高橋昌也、赤座美代子、森本レオ、荒木道子など。音楽は井上堯之が担当している。
簡単にストーリーを紹介すると大学生だった萩原が家庭教師をしていた桃井が大学に合格すると彼女と付き合うようになる。しかし、叔父の娘(檀ふみ)とも付き合うようになり、彼女との結婚を考えるようになる。それを桃井に告げると妊娠していることを知らされる。萩原は思い出の場所(雪山)に桃井を誘い殺害する。そして壇との結婚を果たすのだが、捜査の手が伸びていた。というような感じ。萩原は本作で「キネマ旬報」最優秀男優賞を受賞した。神代は「傷だらけの天使」でも2本監督を担当している。
ちなみに、桃井かおりの兄は脚本家の桃井章で、「太陽にほえろ」も数本担当している。ただし、萩原が降板した後である。