岸田森の出演映画 その3 | お宝映画・番組私的見聞録

岸田森の出演映画 その3

引き続き岸田森である。今回は70年の大映作品を中心に取り上げたい。
「座頭市と用心棒」(70年)は勝新太郎「座頭市シリーズ」の第20作で、「用心棒」と言えば三船敏郎だ。と言っても「用心棒」は東宝の作品だし、三船が「三十郎」として出てくるわけではない。佐々大作を名乗る謎の素浪人だが、その立ち振る舞いも「三十郎」とは違う。監督はもちろん黒澤明ではないが、東宝の岡本喜八が務める。制作は勝プロダクションで配給は大映である。三船と岡本を貸し出した形の東宝の主張により、本作は正月興行を外れている(1月半ばからの公開)。三船・黒澤のラインが強力なので、三船・岡本のラインの作品がパッと思いつかないが(「結婚のすべて」「血と砂」など)、プライベートでも交友が深く岡本が助監督時代からの付き合い。勝も三船をたてるために岡本を監督に指名したという。
個人的には本作のタイトルを自分は「座頭市対用心棒」だと、ずっと勘違いしていた。実際に二人が本気で対決するわけではないので、タイトル詐欺と思っていたのだが、その内容から「座頭市と用心棒」というタイトルなら正しいわけである。本作で敵役となるのが岸田森演じる九頭竜で、その正体は公儀隠密。他の共演は若尾文子、嵐寛寿郎、滝沢修、細川俊之、米倉斉加年など。勝は岸田を高く評価しており、「勝アカデミー」の講師を頼んだりしていた。
「玄界遊侠伝破れかぶれ」(70年)も勝新太郎の主演作だが、監督は東映のイメージが強いマキノ雅弘。まあ実際にこの時点では東映の所属だった(翌年に退社)。高倉健の主演で「日本侠客伝シリーズ」や「昭和残侠伝シリーズ」をヒットさせていたが、それを大映でもやろうとしたのだろうか。キャストも勝、京マチ子、安田道代(大楠道代)、津川雅彦、南美川洋子などを除けば、松方弘樹、天津敏、山本麟一、和崎俊哉、水島道太郎といった東映色の強いメンバーが並んでいる。ただ松方は当時大映にレンタル移籍されていた身である。岸田森は山本麟一が親分である太田黒組の代貸といった役どころ。また、マキノによれば、若山富三郎がノンクレジットで立ち回りの場面に出演しているらしい。当時は既に大映の城健三朗ではなく、東映の専属にに戻っていた。
「おんな極悪帖」(70年)の主演は安田道代(大楠道代)、田村正和。元々は若山富三郎が可愛がっていた安田の為に企画していた作品だという。他の出演者は佐藤慶、小山明子、小松方正、山本麟一、遠藤辰雄、早川雄三など。岸田の役は舞台となる三田藩の藩主・太守。内容は大雑把に言えば、安田と正和、そして小山で、登場人物を次々と殺害していくというような話だ。岸田も正和に斬殺される。その正和も最終的には安田に…。ちなみに、原作は谷崎潤一郎の「恐怖時代」。
71年の岸田は、テレビでは「帰ってきたウルトラマン」に出演。主人公・郷秀樹(団次郎)が働いていた自動車修理工場の経営者・坂田健役でレギュラー出演。しかし、その妹役でヒロインでもあった榊原ルミのスケジュール確保が困難にななっため37話にて宇宙人に襲われ共に死亡という形で降板した。その直前の35話にて岸田は朱川審の名で脚本を書いている。71年の映画については次回。
前回、「銭ゲバ」のところで唐十郎に触れたが、記事をアップした直後にその訃報を聞いて驚いた。兎にも角にも合掌。