岸田森の出演映画 | お宝映画・番組私的見聞録

岸田森の出演映画

今回からは岸田森である。我々世代には「怪奇大作戦」「帰ってきたウルトラマン」「ファイヤーマン」といった円谷作品や「傷だらけの天使」などで子供の頃から馴染みのあるバイブレイヤーだったが、亡くなって既に40年が経過している。前述の様にテレビでの活躍が印象に深いが、勿論映画にも数多く出演している。
岸田森は39年生まれ。本名である。父・虎二は劇作家・岸田國士の弟で、國士の娘が岸田今日子だ。顔立ちと体形から長身のイメージだが、169cmと意外に小柄である。
61年に文学座付属演技研究所に1期生として入団。同期に小川真由美、橋爪功、北村総一朗、草野大悟、寺田農、悠木千帆(樹木希林)らがいた。62年からテレビドラマに出演するようになり、映画出演も同年東宝の「放浪記」が最初のようである。森光子の舞台版が有名だが、映画版の主演は高峰秀子。他に田中絹代、加東大介、宝田明、仲谷昇、草笛光子、小林桂樹などで、岸田は同期の橋爪、草野と共に学生(料理屋の客)役で出演している。
65年に同期である悠木千帆と結婚。翌65年に座員に昇格した。この年に出演した映画が日活の「渡世一代」である。高橋英樹、和泉雅子主演の大正時代を舞台にしたヤクザものだが、岸田は高橋、和泉/松尾嘉代に続くクレジット4番手の大役。高橋の弟分だった岸田だが、現代で言うパワハラ的(殴られたりとか)な接され方を恨みに思って、敵側に寝返る。最終的には高橋に仕留められるのだが、一番の悪役として目立っている。
「水に書かれた物語」も同年、日活で公開されているが製作は中日映画社で、浅丘ルリ子くらいしか日活俳優は出ていない。主演は岡田茉莉子で朝丘、入川保則、山形勲、弓恵子、桑山正一などが共演。岸田の役は入川が子供の頃に病死した父親である。
翌66年に草野や妻・悠木と文学座を退団し劇団「六月劇場」を結成する。以降は舞台中心からテレビ・映画中心へ活躍の場を移している。この年は、大ヒットドラマ「氷点」に、ヒロイン内藤洋子の義兄役で出演し、一気に知名度を高めた。それまでにも多くのドラマに出演していたのだが、「氷点」が本格的なテレビ初出演と語っているらしい。
67年は日活「斜陽のおもかげ」に出演。主演は吉永小百合で、太宰治の愛人の子という設定。岸田はその吉永と恋に落ちる役である。しかし山岳部員である彼は山で遭難してしまうのだった(結局は無事)。「氷点」で岸田と共演の新珠三千代が東宝からレンタル出演。その交換条件として浅丘ルリ子が東宝の「日本一の男の中の男」に出演したという。新珠は吉永の母かず子役、つまり太宰の愛人だった人物。太宰の小説「斜陽」の主人公の名はかず子である。それにちなんで劇中での通称は「斜陽さん」だが、悪い意味ではないらしい。太宰と盟友であった作家の壇一雄が本人の役で出演している。
68年に悠木と離婚。円谷プロ「怪奇大作戦」にレギュラー出演にするが、これが自身の芝居の一大転機になったと語り、「自分は円谷育ち」と公言している。その知的なイメージは本作が大きいようである。