本郷功次郎の出演映画 | お宝映画・番組私的見聞録

本郷功次郎の出演映画

大瀬康一と大映では共演が多かったということで、今回からは本郷功次郎である。
本郷と言えば、近年は「特捜最前線」の橘警部のイメージが強いと思うが、大映では若手スターの一人であった。三船敏郎とか高倉健のように、俳優になるつもりは全くなかった状態から名優になった例は結構あるが、本郷も俳優になる気などなかったという。
38年岡山県生まれで、大学は立教で柔道部に所属していた。芸名っぽいが本名である。俳優になった経緯はかなり特殊で、本郷の叔母は柔道着姿の彼の写真をいつも持ち歩いていたという。その夫(つまり叔父)は大映の重役である松山英夫の友人で、たまたま本郷の写真が松山の目に留まったという。大映では菅原謙次に続く柔道スターを探しており、松山が叔母から写真を借りて社長の永田雅一に見せたところ「すぐに連れてこい」という話になった。
大映本社で松山と市川崑による面接があったが、本郷にその気はなく「日本映画はつまらないから見ません」とまで言い放ったが、説得されて「柔道映画なら」ということで承諾したのだった。こうして第12期大映ニューフェイスとして58年に入社。同期には浜田ゆう子、森矢雄二、大川修などで、直前に「俺たちは狂ってない」で公募デビューした野口啓二、小林勝彦も同期扱いかもしれない。
59年に柔道映画「講道館に陽は上る」でデビュー。主演扱いは菅原謙次のようだが、本郷は事実上の主役という感じ。他に浦路洋子、中村玉緒、須賀不二夫、佐々木孝丸など。実はこの2カ月ほど前に公開された「最高殊勲夫人」にも出演しているが、ノンクレジットである。同じような役の同期、森矢、大川はクレジットされているが、スター候補の本郷はあくまでもテスト出演の扱いということだろう。
59年の本郷は「講道館に陽は上る」以外にも8本の映画に出演と、デビュー年からフル回転である。
「紅あざみ」は勝新太郎主演の時代劇。芹沢鴨が局長のころの新選組と勤皇浪士との対立を描いており、「紅あざみ」とは浪士を助ける謎の人物。正体はもちろん勝新で、本郷は浪士の一人吉村の役だが新選組に斬られてしまう。芹沢役は小堀阿吉男で、隊士・伝九郎は千葉敏郎。他に鶴見丈二、黒川弥太郎、近藤美恵子、青山京子など。
「次郎長富士」はお馴染み清水次郎長一家を描いた大映オールスターキャストお時代劇。主役の次郎長には長谷川一夫、吉良に吉に市川雷蔵、森の石松に勝新太郎。クレジットでは以下、根上淳、鶴見丈二、船越英二と続き、次に小政役の本郷。新人としてはかなり上位で期待されていたことがわかる。他の次郎長一家に黒川弥太郎、島田竜三、林成年、千葉敏郎、石井竜一、品川隆二など。女優陣も若尾文子、京マチ子、山本富士子といったスターが出演している。
「濡れ髪三度笠」は市川雷蔵主演の時代劇。本郷は雷蔵に続く二番手クレジットで、11代将軍家斉の38番目の若君・長之助の役。雷蔵演じる半次郎に同行する弥次喜多の役に中田ダイマル・ラケット。他に淡路恵子、中村玉緒、楠トシエなどで、長之助を狙う刺客に千葉敏郎。和田弘とマヒナスターズが「宿の若い衆」で出演している。