黒部進の出演映画 その2 | お宝映画・番組私的見聞録

黒部進の出演映画 その2

前回に続いて黒部進である。
65年は記録によると全部で5本に出演している。東宝所属なので全て東宝(東京映画含む)の作品である。
まずは「勇者のみ」。これは日米合作の戦争映画で、監督と主演をフランク・シナトラが務めている。シナトラと言えば歌手のイメージが強いが俳優としても多くの作品に出演している。監督を務めるのは本作が初である。特撮部分の監督は円谷英二だ。
ストーリーは太平洋戦争の末期、ある孤島に米軍の輸送機が不時着。そこには戦況から見放された日本軍人数名がおり、両軍が島で唯一の井戸を巡って対立する。次第に友情が芽生えていくのだが、そこに米軍の艦艇が応援に現れる。降伏するように説得するも日本軍は祖国に殉ずることを告げ、両者は戦火を交えることになる、といったもの。
シナトラが演じるのはマローニという衛生下士官で、負傷した日本兵の治療も快く行う。大尉役のクリント・ウォーカーは西部劇ドラマ「シャイアン」の主演で知られる。軍曹役のブラッド・デクスターは「荒野の七人」で、その一人であるハリーを演じた。日本側は上官の黒木中尉に三橋達也、田村軍曹に加藤武で、他に勝呂誉、佐原健二、谷村昌彦、太宰久雄、春風亭柳朝、そして黒部進などといったメンツである。
「太平洋奇跡の作戦キスカ」は東宝男優陣総出演といった感じの戦争映画で女性は登場しない。三船敏郎の海軍少将を筆頭に、志村喬、藤田進、西村晃、田崎潤、中丸忠雄、平田昭彦、土屋嘉男、久保明、船戸順、児玉清、佐藤允、山村聰といった豪華メンバーで、黒部は水兵の役。二瓶正也や阿知波信介も水兵役である。本作も特技監督は円谷英二だ。
「けものみち」は松本清張原作のサスペンス。主演は池内淳子で、彼女は新東宝倒産後は東京映画の所属となっていた。
他に池部良、小林桂樹、小沢栄太郎、伊藤雄之助、大塚道子、森塚敏、千田是也、中丸忠雄、土屋嘉男などで、黒部は黒谷という得体のしれない男を演じた。小沢栄太郎の用心棒で、小林桂樹や主役の池内まで手に掛けるのである。ちなみに、82年のNHKドラマ版は名取裕子の主演で、山崎努、伊東四朗、西村晃、加賀まりこなどが出演。黒部の役は林ゆたかが演じている。
「国際秘密警察 鍵の鍵」は三橋達也主演のシリーズ第4作。黒部は「虎の牙」に次いでシリーズ2度目の登場。ここでは蔡というギャングのボスを演じる。ただの敵役ではなく三橋演じる主人公と共闘したりする。他の出演者は浜美枝、若林映子、中丸忠雄、堺左千夫、天本英世などで、安岡力也がチョイ役で顔を出している。このシリーズは何故か毎回監督が変わっており、本作は谷口千吉が担当。三船敏郎や黒部を東宝に導いた山本嘉次郎監督の弟子にあたる一人で、三船を最初に映画に起用したのは山本でも黒澤でもなく谷口である。
「100発100中」は宝田明主演のアクションコメディ。他には浜美枝、有島一郎、平田昭彦、多々良純、堺左千夫などで、黒部は「サングラスの男」という役名ながらクレジット順は7番目。実は前述以外の出演者はほぼ大部屋役者ばかりで、ノンクレジットや二役の役者も多くいたりするのだ。堺の子分役の伊吹徹や当銀長太郎は東宝ニュータレント二期生で、黒部の一期先輩ということになる。次回に続く。