黒部進の出演映画 | お宝映画・番組私的見聞録

黒部進の出演映画

新年第1弾として何をやるか考えたが、結論から言えば昨年と同じスタイル。テレビイメージの強い役者の出演映画を辿って行くというもの。今回は自分が最初に触れたヒーローは何だったか考えたのだが、正直記憶が曖昧なので、ここは無難に「ウルトラマン」ということにした。というわけで、初代ウルトラマンと言えば黒部進である。
黒部進は39年生まれで、本名は吉本隆志。中大4年の時に家賃滞納からホームレス状態となり、靴磨きで生計を立てていた。そこに客としてやってきたのが東宝の山本嘉次郎監督。あの黒澤明、本多猪四郎、谷口千吉の師匠にあたる人物である。山本は黒部に東宝ニューフェイスの受験を勧め、62年に第3期オール東宝ニュータレントに見事に合格。同期には緑魔子がいた。
東宝ニューフェイスの名称は60年の15期まで用いられ、61年からオール東宝ニュータレントの名称が用いられるようになったのだが、後者出身でも東宝ニューフェイスと言われることが多い。ちなみに、そのニューフェイス15期には「ウルトラマン」のスーツアクターとなる古谷敏、イデ隊員役となる二瓶正也、ニュータレント1期にはフジ隊員役となる桜井浩子がいた。桜井は15歳での東宝入社であった。
映画初出演は63年の「六本木の夜 愛して愛して」で本名の吉本隆志名義であった。ちなみに主演は峰健二、後の峰岸徹である。峰岸はこの後、俳優座養成所に演技を学び、68年に大映から再デビューすることになる。
黒部の正式デビュー作とされているのは「暁の合唱」(63年)。ヒロインである星由里子の相手役で、ほぼ主役といえる大役であった。この際に出身地の富山県黒部市にちなんでプロデューサーの藤本真澄から黒部進の芸名を与えられている。他の共演者は宝田明、新珠三千代、山村聰など。この「暁の合唱」は3度目の映画で、41年の松竹版は木暮美千代、近衛敏明、佐分利信、川崎弘子など。55年の大映版は香川京子、根上淳、高松英郎、小沢栄太郎などである。本作で黒部は色々と失敗して信頼を失ったとしている。実際、次回作から藤本ではなく田中友幸や森田信プロデュース作品に回っている。
64年は「恐怖の時間」。これは黒澤映画「天国と地獄」での誘拐犯役で一気に知名度を上げた山崎努が主演。本作も「天国と地獄」と同じエド・マクベインが原作となっている。誤射により恋人を殺された男(山崎)が銃を持って刑事部屋に乱入。その刑事(加山雄三)は不在で、彼の帰りを待つ男と刑事たちとの密室劇だ。加山と同姓(山本)のベテラン刑事役に志村喬で、黒部は若手刑事の一人。係長役が「天国と地獄」で子供を間違って誘拐された運転手を演じた佐田豊で、彼にとって二番目にセリフのある役かもしれない。他に星由里子、土屋嘉男、富田仲次郎、田村奈己、小山田宗徳など。
「国際秘密警察 虎の牙」は三橋達也主演のスパイアクションで本作はシリーズ2作目。黒部は中丸忠雄演じる某国スパイの部下のような役。他に白川由美、水野久美、久保明、藤田進など。
「裸の重役」は森繫久彌主演のサラリーマンもの。星由里子、団令子、児玉清、有島一郎、加東大介、東野英治郎などが出演。黒部は梶本という役。未見で何とも言えないが、若手社員の一人ではないだろうか。
「三大怪獣 地球最大の決戦」。三大怪獣と言いながら、ゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラの四匹が登場する。敵役のキングギドラは含まないらしい。出演は夏木陽介、星由里子、若林映子、小泉博、ザ・ピーナッツ、佐原健二、平田昭彦、志村喬など。黒部にとっては初の東宝特撮出演だが、役柄は暗殺団の手下一というもの。伊藤久哉がそのボス役だ。64年は以上だ。デビュー作こそ次期スター候補の扱いだったが、以降は存在感のある若手と言った扱いになっている気がする。