けんか安兵衛
「池田大助捕物日記」に続く「けんか安兵衛」(75年)が「白雪劇場」の最終作である。ただし、放送枠的に「池田大助」の後番組となったのは人気番組の「どてらい男」(73~77年)であった。73年10月~75年3月までは火曜10時に放送されていたのだが、翌4月からこの日曜9時枠に移動し、「白雪劇場」が火曜10時枠になるという入れ替えが行われたのである。これは制作局の関西テレビとキー局フジテレビでの視聴率に大きな差があったからということらしい。
そんなわけで、「池田大助」終了の2日後に「けんか安兵衛」はスタートした。ちなみに安兵衛とは赤穂浪士の一人である中山安兵衛=堀部安兵衛のことである。安兵衛は通称で本名は堀部武庸という。堀部家に婿養子に入る前が中山姓で、本作は中山安兵衛時代を描いている。
主役の安兵衛を演じたのは松方弘樹で、ヒロインの千津を演じたのが仁科明子(後に亜季子)である。この二人といえば、不倫関係となったことで知られるが、二人の出会いは74年の大河ドラマ「勝海舟」だった。松方は病気降板した渡哲也の代役で主演となった。「けんか安兵衛」への仁科の出演は松方川の要望だったらしい。渡哲也と仁科明子は「大都会」シリーズで兄妹役を演じてることになるが、「大都会partⅡ」(77年)放送時に不倫騒動があり、仁科は番組を途中降板した。ちなみに78年に松方と先妻の離婚が成立し、翌79年に二人は結婚し、仁科は芸能界を引退するが98年に復帰している。
話を戻すと他のレギュラーとして、松尾和子、京唄子、鳳啓助、有川博、南利明、南州太郎などがいる。松尾和子は歌手として知られるが、ドラマレギュラー出演は本作が初だったと思われる。
ゲストは有島一郎、寺田農、藤村俊二、大和田伸也、日下武史、岡田英次、中野誠也、吉田義夫、杉田かおる、森次晃嗣、千昌夫、夢路いとし、青木義朗、藤巻潤、長門勇、益田喜頓、村松英子、犬塚弘、桂三枝、月亭可朝、桂福団治、岡田可愛、笑福亭松鶴、水島道太郎、志穂美悦子、中田カウス・ボタン、進藤英太郎などである。関西制作の番組らしくお笑い系の人が多めである。進藤はラスト2話に登場し、安兵衛の義父である堀部弥兵衛を演じた。
前述のとおり、「白雪劇場」は本作を持って終了となり、火曜10時枠ではこの1作のみであった。
本作に原作はないようなのだが、73年に日本テレビで「ご存知時代劇」という枠があり、単発ドラマ13本が放送されたのだが、その中の1本が「けんか安兵衛」であった。やはり中山安兵衛が主人公で若林豪が演じている。偶然ではないだろうし、スタッフや出演者はかぶっていないようだが、この作品がベースになった可能性は大きいと思う。