男じゃないか
今回は久々に現代劇である。3回前に取り上げた「北斗の人」(74年)は小西酒造提供の「白雪劇場」という枠で放送されたのが、そこで目に付いたのが「男じゃないか」(69年)である。このタイトルだとどんなドラマだかわからないが、実は刑事ドラマなのである。見たことも聞いたこともないドラマで、実際ウイキペディアに項目こそあるものの、それ以外にネット上にも情報が見当たらないのである。
主演は当時25歳の関口宏で、その関口が演じるお茶汲みばかりしている新人刑事・半田新一の活躍を描いたドラマということである。ネーミングは新人とか半人前とかからイメージされたものであろうか。80手前の現在も司会者として健在の関口だが、俳優のイメージは薄くなりつつある。
他の出演者だが、先輩刑事に二谷英明(槇刑事)、多々良純(千石刑事)、三上真一郎(鳥海刑事)などで、志村喬が大原署長を演じている。こうして見ると中々豪華な顔ぶれといえるのではないだろうか。二谷は後に「特捜最前線」の神代課長でお馴染みとなるし、多々良は「非情のライセンス」でもベテラン刑事を演じていた。
女優陣では荒木雅子(半田多鶴子)、伊藤榮子(半田明子)、藤田弓子(恵子)等がおり、あくまでも予想だが、荒木は新一の母、伊藤は妹、藤田が恋人といったところだろうか。藤田は当時23歳で、この前年である68年にはNHKの朝ドラ「あしたこそ」でヒロインを演じていた。しかし30代半ばあたりから、母親とかオバサンのような役が多くなっている。
他に役名・役柄は不明だが、南都雄二、田中弘史、森乃福郎、遠藤太津朗(当時・辰雄)といった名前が挙がっている。南都雄二はミヤコ蝶々とのコンビで夫婦漫才をやっていたが、73年に48歳の若さで亡くなっている。森乃福郎はタレントだが、本職は落語家だ。元々は笑福亭福郎を名乗っていた。
サブタイと何人かのゲストは判明しているようで、6話の宮土尚治は桜木健一のこと。7話には土屋嘉男、内田朝雄がゲスト。志村喬と多々良純、土屋嘉男で「七人の侍」出演者の共演だ。18、19話は「放火魔」の前後編。ゲストに島米八、藤田佳子、佐藤蛾次郎の名がある。藤田佳子は現在作詞家の悠木圭子である。23話に山形勲。24、25話も「汚職」の前後編で松山英太郎。最終26話「恋人たち」には英太郎の弟・松山政路(当時・省二)が出演しているようだ。
また、71年に第2シリーズが放送されたとなっているが、疑問である。まず「白雪劇場」枠には第2シリーズは存在しない。まあ放送枠が変わるのはありうるとしても、94年に「週刊TVガイド」でお馴染みの東京ニュース通信社が発行した「テレビドラマ全史」という分厚い本には年ごとに放送されたドラマの一覧があるのだが、71年に「男じゃないか」は載っていなかった。100%全てのドラマが掲載されているとは限らないともいえるが、10数年前に出た「ザ・テレビ欄」という当時の新聞テレビ欄を載せた本に、第2シリーズが放送されたとされる71年4月13日分が掲載されているが、そこにも「男じゃないか」はなかった。その日、放送局のフジテレビではナイター中継があったので、それによる放送休止も考えられるが、雨傘番組は映画だったので、真相は不明だ。これだけで、第2シリーズは存在しないと結論づけることはできないが、その可能性は高い気がする。