大都会 闘いの日々 その2
前回に続き「大都会 闘いの日々」(76年)である。刑事が8人、新聞記者が10人という男レギュラーがいるわけだが、一応女性レギュラーもいる。まず渡哲也扮する黒岩刑事の妹・恵子が仁科明子。まだ松方弘樹と結婚する前だが、この翌年に松方との不倫騒動が起こっている。松方は78年に前妻との離婚を成立させ、79年に二人は結婚することになる。
そもそも二人が知り合ったのはNHKの大河ドラマ勝海舟(74年)である。当初、海舟役は渡で、その愛人・お糸役が仁科だったわけだが、渡は病気で降板し、後を引き継いだのが松方だったわけである。つまり渡が二人が知り合うきっかけを作ったともいえる。
バー「ムンク」のママ三浦直子が篠ヒロコ。翌年には表記が篠ひろ子になるが、まだ篠ヒロコだった頃は美人だけれども暗いイメージというか陰のある女性に見えた。本作でも黒岩に暴力団関係の情報を流しながらも、彼に惹かれていくという役どころ。その正体は政財界のフィクサー桂木(山内明)の情婦というもので、そこから足を洗おうとするが、素性を知った深町(佐藤慶)や一色(玉川伊佐男)が黒岩に内緒で彼女を暴力団壊滅作戦に利用しようと考える。結局、自分は黒岩に愛される資格はないと桂木との関係継続を選択し、海外へと旅立っていく。というのが最終回。
そんな彼女も約10年後には「毎度おさわがせします」では、木村一八の母親役をコミカルに演じていた。そして92年に作家の伊集院静と結婚。伊集院の前妻は若くして亡くなった夏目雅子だ。篠は97年に女優業を休止し、現在に至る。
話を戻すが、そのバーで歌っている歌手が牧村三枝子。出演者としてはクレジットされていないが、EDで「挿入歌・『赤提灯の女』唄-牧村三枝子」と名前が出ている。60後半となった現在も独身だが、その理由としてこの時に石原裕次郎と渡哲也に出会ってしまい、他の男性に目が行かなくなったからと述べている。
ゲストに目を向けると、やはり日活出身の役者が多い。西尾三枝子、深江章喜、岡崎二朗、柳瀬志郎、榎木兵衛、長弘、青木富夫(突貫小僧)、高橋明、中平哲仟、相原巨典、浜口竜哉、郷鍈治など。
また、当時放送中だった「特別機動捜査隊」の三船班メンバー青木義朗、早川雄三、吉田豊明が立て続けにゲストで出演している。他の番組では普通に悪役だったりする。青木義朗も日活映画には数多く出演していた。
番組は全31回という中途半端な話数で終了している。キャストは豪華だったが、地味で暗いイメージのある話だったことは否めない。まあ視聴率が稼げる番組ではなかったのである。「次は視聴率を取りに行こうよ」と岡田Pは裕次郎に言われたこともあり、「PartⅡ」は方向転換し明快なアクションものになったのである。