大都会 闘いの日々 | お宝映画・番組私的見聞録

大都会 闘いの日々

刑事ドラマにおいては、次第に新聞記者は邪魔者的存在になっていったと思う。例えば「特別機動捜査隊」で60年代は村上不二夫(村上記者)など準レギュラーがいて、ストーリーに絡むこともあったが、70年代に青木義朗(三船主任)が実質主演となってからは、三船が新聞記者を全く相手にしないキャラだったこともあり、番組から記者の存在は消えていった。
そんな中、刑事ドラマだが記者の存在もクローズアップした作品が「いろはの“い”」の前番組だった「大都会 闘いの日々」(76年)だった。これは石原プロの「テレビ第1回作品」でもあり、肋膜炎で病床の身にあった渡哲也の復帰作品でもあった。
現在もそうだが、刑事ドラマといえば殺人などを担当する捜査一課が舞台となるのが普通だが、本作は暴力団担当の捜査四課が舞台となる。この四課の面々がとても渋い。佐藤慶扮する深町警視率いる通称深町軍団。以下、玉川伊佐男(一色課長代理)は深町不在時に指揮を執るが、階級は不明。まあ警視か警部になるはずである。中条静夫(加賀見係長・警部)、高品格(丸山部長刑事)黒岩と組むのはいつもこの人である。草薙幸二郎(高木部長刑事)、小野武彦(大内刑事)、粟津號(平原刑事)、そして渡扮する黒岩刑事。階級は巡査長でこのメンバーでは若手である。「大都会PartⅡ」や「Ⅲ」を先に見た人は混乱するかもしれないが、別世界の話と考えたほうがよい。黒岩はデカ長ではないし、丸山は普通に先輩だし、大内も同年代だが多少先輩格のようである。メインライイターは倉本聰であり、派手なドンパチなどはない。
捜査本部が城西署にあるため、彼らは城西署の刑事たちと思われがちだが、設定では大内と平原の二人だけが城西署の所属で、黒岩を含めた残りのメンバーは警視庁からの出向組、つまり結構なエリートなのである。この設定って見ていても中々わからない気がする。
そして記者クラブの新聞記者たち。石原裕次郎演じる滝川キャップ中心とした東洋新聞は寺尾聡(日高)、神田正輝(九条)、北浦昭義(由比)。神田正輝はこれがデビュー作。誰が見ても素人感が満載であった。毎朝新聞は宍戸錠(松川)、平泉征(大久保)、武藤章生(南)、中央タイムスは柳生博(木内)、山根久幸(新井)、浜田晃(吉乃)といった面々。もちろん全員が登場する回はほとんどない。
裕次郎と渡は日活出身なので、宍戸錠、高品格、武藤章生といった日活仲間がキャスティングされている。玉川伊佐男、草薙幸二郎も日活映画への出演は多かった。一方、中条静夫、平泉征(成)といった大映出身者もいる。山根久幸(ひさよしと読む)も日活作品への出演経験がある。新聞記者役のイメージしかないと思ったら、それもそのはずで「PartⅡ」や「西部警察」でも新聞記者の役をやっていた。
ウィキには裕次郎は九条役には五代高之を考えていたが、プロデューサーの岡田晋吉が神田正輝を強く推したので神田になったとある。岡田の著書では石原プロが本作で神田を売り出そうとしていたとあった。真実は不明だが、五代は当時20歳でこの役には若すぎると思う(神田は25歳)。