五番目の刑事
長いことOPとEDしか見たことがなかった番組が、昨年末から東映チャンネルで放送が開始された。それが「五番目の刑事」(69~70年)である。記憶になかったとかではなく、中身は全く見たことがなかったのである。
主演が原田芳雄(原田刑事)で、他のメンバーは工藤堅太郎(立花刑事)、桑山正一(牛山刑事)、常田富士男(庄田刑事)、そして中村竹弥(山田部長刑事)という五人が東新宿署捜査一課の面々である。リアルに新宿の街を舞台にしている。通常は№3くらいの部長刑事が一番偉いのか?と疑問に思ってしまったが、まあ画面には登場しない上司がいるのであろう、と勝手に解釈。現場レベルなら部長刑事が責任者ということもあるだろう。西部警察とかもそうだし(渡哲也の大門部長刑事)。
「五番目の刑事」というタイトルからは新人・原田刑事と四人の先輩という関係を想像したのだが、工藤堅太郎演じる立花刑事は先輩ではないようである。実年齢でいえば、原田は当時29歳で、工藤は28歳と原田が1つ上なのだ。第1話では立花刑事は原田刑事を先輩扱いしているのだが、第2話になると「原田君」と呼ぶようになり、二人は同期という感じになっている。上下関係の逆転は「特別機動捜査隊」のような長い番組ではよくあったのだが、2話でいきなり設定が変わったようである。ちなみに二人とも俳優座の出身だが、原田は花の15期生なのに対し、工藤は11期生なので俳優座では工藤が先輩だ。工藤の役名は立花刑事だが、東映の刑事ドラマはタチバナという名前が大好きなのである。「特別機動捜査隊」の橘部長刑事(南川直)、「非情のライセンス」の橘警部(渡辺文雄)、「Gメン75」の立花警部(若林豪)、「特捜最前線」の橘警部(本郷功次郎)などがいる。№2クラスが多く、若手のタチバナは珍しい。
原田刑事のフルネームだが、芳雄ではなくて原田康三というようである。ウイキペディアでは康二となっているが、何話だったが、処分のため張り出された紙に「原田康三」と書かれていたのである。どこからきた名前かと思えば、番組プロデューサーの名前が勝田康三なのである。
見ていて思ったのは、72年開始の「太陽にほえろ」が始めたと思われていたことが、実はこの「五番目の刑事」が悉く先んじていたことがわかる。原田刑事は皮ジャンGパンスタイルで、パトカーではなくジープを乗り回しているのだ。「太陽にほえろ」の第1話ファーストシーンはジープを運転しているマカロニ刑事(萩原健一)だ。松田優作といえば、言わずもがなのジーパン刑事である。これらはすでに原田芳雄がやっていたのである。また、部長刑事を「長さん」と呼ぶのは「五番目の刑事」でもそうなのだが、これはもっと昔から「特別機動捜査隊」や「七人の刑事」でも部長刑事は「長さん」と呼ばれていたのである。「特別機動捜査隊」の第1話(61年)で、妹尾部長刑事(佐原広二)は「長さん」と呼ばれているのを確認できる。ひょっとしたら映画の「警視庁物語」シリーズ(56~64年)でもそうだったかも。つまり、これらは「太陽にほえろ」が最初ではなかったわけである。
「五番目の刑事」では、当初はスーツ姿なのは工藤だけで、原田以外にもベテランの桑山や常田までチンピラのような恰好をしていたのである。それでは、原田が目立たないし、誰が刑事だかわかり憎いと思われたのかもしれないようで、5話くらいからは常田も(細身の)ネクタイ姿になり、桑山もおとなしめのYシャツ姿に変更されている。三つ揃いの工藤だが、エリート意識が強いわけではない。原田と一緒に暴れまわることもしばしばである。
次回に続く。