日活俳優録43 山本陽子
今回も、63年入社の日活第7期ニューフェイスから山本陽子である。今や説明不要の大女優といえるが、では日活時代の代表作は?と問われるとパッとは浮かんでこないのではないだろうか。
山本陽子は42年生まれで、本名は同じのようだ。高校卒業後は、野村証券に勤務していたが、63年に知人が日活ニューフェイス募集に彼女の応募書類を送ったところ合格。3年間のOL生活に別れを告げ日活に入社した。既に21歳であったが、若く見える顔立ちで、同期だが5歳下の西尾三枝子と同級生役でも違和感はなかった。しかし、他人が応募して合格したというエピソードはよく聞くが、どこまでが本当かは不明で怪しい人も沢山いる。
デビュー作というか初クレジット作品は同期の西尾、谷隼人、沖田駿一らは「学園広場」(63年)での高校生役であったが、山本は年齢もあってか同時期に公開の「霧に消えた人」(63年)という作品で、二谷英明の同僚OLという役柄だったようだ。初のヒロイン級の役は「抜き撃ちの竜 拳銃の歌」(64年)で、主人公(高橋英樹)の亡き恋人とその敵(金子信雄)の娘という二役を演じている。
しかし、吉永小百合、和泉雅子、松原智恵子という日活三人娘は強力で、どうしても彼女たちの助演に回ることが多かった。また、既にテレビドラマや松竹映画で人気のあった十朱幸代も63年から日活と本数契約を結び出演するようになっており、ほぼヒロイン役を得ていた。ちなみに、十朱は山本と同い年である。
映画ではそれほど目立つ存在ではなかった山本陽子だが、64年にはテレビ出演を始めており「しろばんば」では主役をやり、「光る海」「七人の孫」第二シリーズ(65年)などで茶の間の人気を確立するなど、映画よりテレビでの人気が先行していたのである。
その後も映画とテレビ主演は並行して続けていたが、映画ではヒロイン役もあったが、基本的には三人娘の助演という立場はあまり変わらなかった。日活には71年まで在籍していたが、「三人の女・夜の蝶」を最後にフリーとなった。しかし、既に仕事の中心はテレビに移っていたのである。
やはり、個人的には田宮二郎とコンビを組んだ「白い影」(73年)「白い滑走路」(74年)での印象が強い。二人はこれが縁となり不倫関係となり、当時二人の関係は「公然の秘密」と言われていたという。また、「愛を裁けますか」(82年)で共演した沖田浩之とも噂になったことがある。ちなみに沖田は21歳、山本は倍の42歳だったのである。本気で交際していたと思える時期もあったようだが、結局は破局している。
ご存知かと思うが、田宮は78年、沖田は99年に共に自殺している。そのせいかどうかは不明だが、山本陽子は一度も結婚することなく現在も独身を貫いている。