日活俳優録17 伊藤孝雄 | お宝映画・番組私的見聞録

日活俳優録17 伊藤孝雄

久々にニューフェイスの話題だが、日活第三期ニューフェイスは56年に合格した面々で全部で18名いたようだ。
何といっても小林旭と二谷英明。最年長の二谷とアキラでは8歳の年齢差があるが、共に日活を代表するスターとなっていく。筑波久子も主演女優として活躍した。他にも大映で成田純一郎として活躍する加藤博司や松竹俳優録で紹介した松本錦四郎も第三期日活ニューフェイスの出身である。ちなみに松本は日活では本名の植田浩安または穂高渓介名義で数本の映画に出演している。そして、意外とも思えるのが日活イメージのない伊藤孝雄である。当時の雑誌「日活映画」では、ニューフェイスの一人として紹介されているが、この時期に日活映画に出演している様子はないし、プロフィールにも日活ニューフェイスという言葉はでてこない。
伊藤孝雄は37年生まれ。55年に早稲田大学に入学し、その10月に在学のまま宝塚映画に入社している。デビュー作は「箱入り娘と番頭」(56年)という作品。つまり、日活に合格したこの56年はまだ宝塚映画に所属していたことになり、その関係もあってか日活に入社はしなかったのではないだろうか。実際、59年に大学は中退し、そのころ宝塚映画も退社したようである。
この59年になって、伊藤は日活作品出演を果たす。「密会」という作品で主演の桂木洋子の相手役に抜擢されているのだ。桂木洋子は松竹のイメージ、共演の宮口精二は東宝のイメージで、出演者は日活っぽくない作品である。
60年4月には俳優座養成所に12期生(同期に中村敦夫、山本圭、成田三樹夫、松山英太郎、東野英心など)として入り、同時に日活と本数契約を交わしている。61年は前項でも紹介した「刑事物語」シリーズ、「機動捜査班」シリーズなど6本に出演しているようだが、62年と63年は1本づつしか出演していないようである。印象に残る作品も少ないせいもあり、日活映画に出演しているイメージがほとんどないのかもしれない。
63年、俳優座養成所卒業とともに、劇団民藝に入団している。それから50年以上、今も民藝に在籍しているようである。「出撃」(64年)を最後に日活とは契約せずに、大映と本数契約を交わしている。
日活の新人研修は民藝で行われるので、伊藤は研修で民藝が気に入り、日活よりも民藝を選んだのかと調べる前は思っていたのだが、そうではなく民藝入団は日活出演の後だったことが判明した。