日活俳優録4 牧 真介(真史) | お宝映画・番組私的見聞録

日活俳優録4 牧 真介(真史)

今回は日活第1期ニューフェイスでは宍戸錠よりも活躍していたといえる牧真介である。
牧真介は35年生まれで、本名は佐々木基之という。「日本映画俳優全集・男優編」に項目はあるが、写真もなくわずか12行の解説があるのみである。ウィキペディアに項目はなく、謎の部分が多い役者である。
宍戸錠によると児童劇団の出身らしい。デビュー作は前項の北原隆と同じ「からたちの花」(54年)で、その北原の若くして亡くなる友人の役を演じている。北原の芸名は監督の佐伯清が決めたが、牧については不明である。役名(中野清介)とも違うし。
さて牧真介は「少年死刑囚」(55年)で主演に抜擢され、ヒロイン役も同期の木室郁子が選ばれた。ちなみに本作の主演は当初、日活に移ってきた長門裕之が予定されており、髪も坊主にしたという。しかし、牧に変更となり悔しがっていたところ、同期時に公開される海軍少年飛行兵を描く「七つボタン」にも丁度いい髪形ということで、こちらの主演に抜擢されている。
その後も牧は順調で、「狙われた男」(56年)でも主演、「川上哲治物語 背番号16」(57年)では川上の若い頃を演じ、吉原役の宍戸錠とバッテリーを組んでいる。
この頃、宍戸や牧はテレビにも積極的に出演しており、宍戸は「坊っちゃん」(57年)、牧は「姿三四郎」(57年)でそれぞれ連続ドラマの主演を演じたりもしている。また「ひこばえショー」(56年)という、日活の若手俳優で結成されている「ぐるーぷ・ひこばえ」が出演するバラエティーショーがあった。メンバーとなった1期生は宍戸、牧、名和宏、木室郁子の四人であり、この時点でこの4人が生き残り組で、他が脱落組(17人)のような区分が生まれた、と宍戸が著書で書いている。
この「ひこばえショー」での待ち時間での控室でのやり取りが書かれている。顔ぶれは、宍戸と牧、杉幸彦、葉山良二、そして石原裕次郎だった。そこで牧は「テレビを侮らない方がいいよ」と述べており、宍戸と同じ考えだったという。そこは、唯一牧が喋っている様子が書かれている場面でもあった。
順調に見えた牧だったが、「女を忘れろ」(59年)を最後に日活を退社。義兄の事業を手伝うためだったという。これで引退したと「日本映画俳優全集」には書かれているが、牧真史の名で「黒い傷あとのブルース」(61年)、「波止場で悪魔が笑う時」(62年)でいずれも主演で復帰している。しかし、どちらも大宝というわずか三カ月で姿を消した会社の配給作品であり、長い間フィルムが所在不明となっていた(近年発見)。牧真史=牧真介と言う確定情報はないのだが、ポスターを見る限り同一人物と思っていいだろう。
その後だが「記録なき青春」(68年)という映画に牧真介の名が見られる。同一人物だとすれば、牧真介に戻した理由は、真史だと同じ読みのウクレレ漫談の牧伸二がすっかり有名になったからではないだろうか。