東宝俳優録23 若林映子 その2
前回の続きである。若林映子だが、海外映画の出演が続いた後は東宝でもメインヒロイン級の役につくようになった。
藤木悠が主演の「ガンバー課長」(61年)では、ヒロインとなる藤木の妹役に抜擢され、高島忠夫とのロマンスを演じる。高島とは「キングコング対ゴジラ」(62年)でも共演している。この頃は佐藤允の相手役も多く、「野盗風の中を走る」や「紅の空」でその恋人役などを演じた。前者は彼女には珍しい時代劇で、雪村いづみと共に出演している。二人とも時代劇に似つかわしくない顔立ちということで、当時は話題になったという。後者の共演者では天本英世が印象に深いという。天本といえばスペイン通で知られるが、当時も撮影の合間にはスペインやルーマニアの話をしていたらしい。
60年代半ばになると、彼女のイメージでもある特撮映画やアクション映画への出演が多くなる。「宇宙怪獣ドゴラ」「三大怪獣 地球最大の決戦」(64年)は、どちらも先日亡くなった夏木陽介の演じる刑事が主役である。「ドゴラ」は若林と藤山陽子くらいしか女優が出ていないが、若林は悪女役で撃たれて絶命してしまう。「三大怪獣」では、サルノ王女という金星人の末裔でもあるという謎深き女性を演じた。王女のフルネームは「マアス・ドオリナ・サルノ」で、続けて読むと一つのセリフになる。本作は黒澤明の「赤ひげ」の撮影が終わらなかったため、急きょ正月興行用に制作された作品だった。
この頃、若林は三橋達也主演の「国際秘密警察」シリーズの3作品に出演。「鍵の鍵」(65年)では、浜美枝と共にヒロインを演じたが、その二人が揃って本家007のボンドガールとして「007は二度死ぬ」(67年)出演している。当初。二人の役柄は逆であったが、浜の英語力の問題もあり、若林が公安エージェント、浜が海女の役に落ち着いた。実は浜に関しては更迭を考えていたらしく、共演の丹波哲郎に監督のギルバートが説得を依頼したという。その結果を丹波は「浜がホテルから飛び降りると言っている」と告げたため、二人の役柄を入れ替え、浜のセリフを大幅に減らすことで対処した。若林と浜はプライベートでも仲が良かったといい、数年に一度は会っているという。
この後、若林は東宝を退社しフリーとなっているが、映画は日活の「赤道を駈ける男」(68年)が最後となっており、数本のテレビドラマに出演。「オレとシャム猫」(69年)には、石坂浩二、原田糸子、小山ルミと共に主演の一人としてレギュラー出演した。原田や小山とは10歳以上年齢が離れていたが、彼女もまだ30歳であり、それほど差を感じなかった。この三人娘だが、当時は人気があったにもかかわらず、原田は70年ころ、小山も74年ころには引退している。若林も70年以降は国内での出演記録はないが、72年にイギリスのドラマに出演しているようだ。
現在は女優業からは身を引いた状態となっているが、東宝映画のオーディオコメンタリーやリバイバル上映のイベントなどに姿を見せることはあるようだ。未確認情報だが、結婚はしていないという。