新東宝俳優録26 大空真弓
新東宝出身(大蔵時代)なのが、意外に思える女優といえばまずは池内淳子、そして大空真弓といったところだろうか。
大空真弓は40年生まれ。本名は中田佐智子(旧姓)という。東洋音楽高校2年の時に、新東宝スカウトマンの目に留まり、高校卒業した58年に新東宝に入社している。
このさわやかな芸名を付けたのが大蔵貢らしい。一応意味があり、「大」は大蔵の大、「空」は美空ひばりの空、「真弓」は大蔵の娘の名前をもらって命名されたとのこと。大蔵の力の入れ方からも期待の存在だったことがわかる。しかも、デビューする前から58年度のポスターに同社のトップクラスと名を連ねていたという。
デビュー作は近江俊郎監督の富士映画「坊ちゃん天国」(58年)で、主演の高島忠夫の妹役であった。それ以来、この坊ちゃんシリーズには多く出演している。本作には三木のり平や清川虹子、藤村有弘なんかも出演している。
ちなみに公開日は58年1月で、前回の小畑絹子の新東宝デビュー作「女の防波堤」とほぼ同じ時期である。
初年度は大蔵も本体のエログロ路線には出演させたくなかったのか、高島主演の富士映画への出演が多い。しかし、本体への出演が全くなかったわけではなく「汚れた肉体聖女」(58年)なんていうのにも出演している。修道尼の学園が舞台で、大空真弓と高倉みゆきが同性愛の末、心中してしまうというような話で、タイトルやプロットはいろいろ想像させるが、出演者が出演者なので。
58年度は十本に出演する活躍で、58年度の製作者協会新人賞を受賞している。これは各社1名づつといった感じのようだが、翌59年に新東宝で受賞したのは星輝美であった。
出演者クレジットは2番目が多かったが、「十代の曲り角」(59年)で、単独初主演を得る。富士映画だが、女番長になった大空が売春組織から不良少女を救うという話である。「大学の御令嬢」(59年)も主演だが、何故かフィリピンからの留学生という設定だ。本作では初めてハンサムタワーズの4人(菅原文太、吉田輝雄、高宮敬二、寺島達夫)が向かいの下宿屋に住む大学生4人組として顔を揃えている。
大空真弓はこのころ並行してテレビにも出演しており、日曜劇場「カミさんと私」(59年)ではプロデューサーの石井ふく子と出会っている。
新東宝倒産後は、東宝系の東京映画と専属契約を結び、「駅前シリーズ」などに出演していた。
彼女の人気を決定づけたのは、映画よりもドラマの「愛と死を見つめて」(64年)で主演の軟骨肉腫の女子大生を演じてからである(Pは石井ふく子)。テレビでの活躍が多く、新東宝女優のイメージは薄れていったと思われる。
ちなみに「時間ですよ」の第一シリーズ(70年)で、当初、松の湯の息子一郎(松山英太郎)の嫁を演じていたのは大空である。しかし、わずか7話で降板。確か妊娠出産のためだったと聞いている(もちろん相手は勝呂誉のはず)。8話から代役として登場したのが松原智恵子だったのである。シリーズは長く続き、完全に松原智恵子のイメージになってしまったけれども。
このときの大空の腹の中の息子が後にいろいろとやらかすのである。