新東宝俳優録18 三ツ矢歌子 | お宝映画・番組私的見聞録

新東宝俳優録18 三ツ矢歌子

40人いたという新東宝第4期スターレット一番のスターといえば、三ツ矢歌子であろう。
前回の北沢典子は友人が無断で写真を送ったことがきっかけでと書いたが、実は三ツ矢歌子も友人が無断で写真を送ったことがきっかけでスターレットになった、という同じエピソードを持つ。スターにありがちなエピソードなので、本当かどうかはわからない。会社側で考えた筋書きということもよくあるらしいので。
三ツ矢歌子は36年生まれ。本名は宇汰子と書く。子どものころのあだ名は「サイダー」だったと、「ぴったしカンカン」にゲストで来た時に言っていた(三ツ矢サイダーは百年以上前から販売されている)。
当初からスター候補生であり、デビューも他の同期より一足早く「君ひとすじに」(56年)で、主演の宇津井健を慕う役であった。ヒロインは久保菜穂子なのだが、どう見ても三ツ矢歌子の勝ちだよなと思ってしまう。
新東宝の清純派と言われるが、「肉体女優殺し五人の犯罪者」「人喰海女」「ヌードモデル殺人事件」(58年)といったエログロ路線映画で三原葉子との共演が多く、露出の多い恰好をすることもあるので、清純派のイメージは個人的にはあまりない。
この頃の新東宝には珍しい「人間の壁」(59年)という山本薩夫が監督したシリアス作品が公開されたが(制作は山本プロ)、彼女はここで先生役を演じている。これで女優に目覚めたという彼女は契約切れを機会に他社への移籍を画策したというが失敗に終わる。
翌60年も「黒線地帯」「女奴隷船」「地獄」などでのヒロイン役が続いた。しかし、この60年12月、前述の「人喰海女」「女奴隷船」等を監督した11歳上の小野田嘉幹と結婚した。「新東宝が潰れそうだったので結婚に踏み切った」ということである。御存知の人も多いと思うが、小野田の実弟は平田昭彦、妹は音羽美子である。
翌61年の新東宝倒産後は、引退することもなくテレビが活動の中心となった。そして「昼メロの女王」と言われるようになるわけだが、これらを一切見たことがないので、少し調べてみた。
「花王愛の劇場」で、「女の絶唱」(69年)、「人妻椿」(71年)「愛染椿」(72年)、「妻と女の間」(75年)、「愛の秘密」(76年)等、フジテレビ系でも「午後の微笑」(66年)、「誰がための愛」(68年)、「風の視線」(70年)と毎年のように昼ドラのヒロインをやっている。ちなみに相手役は小泉博、船戸順、山下洵一郎、原口剛、山本耕一、高松英郎、勝呂誉、剣持伴紀といったところである。原口剛や剣持友紀は意外な気もする。
長男の真之は俳優となり吉右衛門版の「鬼平犯科帳」に、同心・山田市太郎役で出演していた。初めは本名だったが、三ツ矢真之→辻政宏と芸名を変えていった。しかし「母親のコネで出演している大根役者」と酷評され、現在は活動していないらしい。まあ「鬼平」の場合はメイン監督が小野田なので「父親のコネ」と言うべきか。三ツ矢歌子も「鬼平」には一度ゲスト出演している(もちろん監督は小野田)。ちなみに萬屋錦之介版では三ツ矢は妻の久栄役である。小野田もメイン監督として参加している。
そんな三ツ矢も、04年間質性肺炎のため亡くなっている。67歳であった。