いろはの“い” | お宝映画・番組私的見聞録

いろはの“い”

60年代は刑事ドラマ以上に記者ドラマが隆盛であった。その代表ともいえる「事件記者」が終了して10年たって放映された新聞記者ドラマが「いろはの“い”」(76年)である。このほどCSで放送が始まったが、目にするのはその本放送以来30数年振りである。
タイトルを見ただけでは何のドラマだかわからないと思う。OPはこう始まる。ガスタンクが爆発する(「ゴジラ対ヘドラ」からの流用らしい)、主演の竹脇無我が電話越しに叫ぶ「“え”じゃないよ。いろはの“い”」。和文通知表というものがあり、「朝日のあ」、「大阪のお」、「子供のこ」、「そろばんのそ」など五十音それぞれあるが、タイトルになりそうなものはやはり「いろはのい」くらいであろうか。まあ現代ではFAXやメールを使えば済むことなのだが。
本家「事件記者」は主に警視庁記者クラブの4社の新聞記者たちが活躍したが、本作も城西署記者クラブ4社8人の記者たちが中心となる。メンバーは竹脇無我、金子信雄(東洋新聞)、黒沢年男(中央新報)、森本レオ、三景啓司(大都日報)、寺尾聡、神田正輝、藤岡琢也(タイムス)といった面々である。竹脇と金子は親子という設定で、ちなみに竹脇の役名は神谷明という。当時すでに活躍していた人気声優と同じ名前である。城西署の刑事を演じるのは高品格、寺田農、片岡五郎で、広報課長が柳生博、女性レギュラーは津島恵子、夏桂子、ホーン・ユキなどである。
本作は「大都会ー闘いの日々」と「大都会PARTⅡ」の間に放送されており、城西署という名前は一緒である。「闘いの日々」で新聞記者だった寺尾と神田、刑事だった高品はほぼ同じような役で出演していたことになる。
この中では三景啓司が一番マイナーな存在であろう。主に70年代に活躍した役者であり、「俺たちは天使だ」や「恐竜戦隊コセイドン」などに出演、アニメ「ベルサイユのばら」や「地球へ」では声優を務めたりしていが、80年代早々にはその名を見かけなくなった。
本作では刑事役の片岡五郎は、主に悪役として有名であろう。前々項で登場した溝口舜亮と同じ俳優座の15期生である。昨年、お笑いコンビ品川庄司の品川祐の母親と結婚したことで話題となっている。
藤岡琢也は本家「事件記者」にも出演しているが、レギュラー扱いだったのはラストの7話分だけだったようだ。レギュラーの一人・清村耕次が自殺した後を受けての出演であった。ちなみにここでの新聞社は新日本タイムス。「いろはの“い”」でタイムス社のキャップ役なのはそれを意識してのことであろう。