文吾捕物絵図 | お宝映画・番組私的見聞録

文吾捕物絵図

東京ぼん太の話題はもう終了するつもりだったが、もう一つ彼が出演していた番組で目を惹いたのがNHKの「文吾捕物絵図」(67年)である。本作は杉良太郎をスターに押し上げた作品として有名だが、杉良といえば「新五捕物帳」というヒット作もあるので、タイトルを「文吾捕物帳」と思っている人もいるかもしれないが「文吾捕物絵図」が正しいタイトルである。
割合有名なエピソードかもしれないが、当初主演には竹脇無我を予定したが松竹に断られ、栗塚旭に決定しかけたが、スケジュール調整がつかないということで流れてしまった。そこに他の役で出演が決まっていた杉良太郎を主役にしてはどうかという意見が出た。当時はまだ売れない歌手だった杉だが、主役が決まっていないと聞き「自分にやらせてくれ」と申し出たところ、演出の和田勉があっさりとOKを出したという。これには裏があり、元々プロデューサーの合川明は新人を主役にして金をかけないで、ヒット番組を作りたいと思っていたことや、杉自身は歌手に未練があったが、所属事務所サイドでは、俳優なら売れるのではという思惑があったという。
もう一人ヒロインとして抜擢された新人が当時17歳の奈美悦子である。この年、西野バレエ団5人娘の一人として売り出した奈美だが、初出演ドラマは意外にも時代劇であった。
他のレギュラー出演者にはベテランが配され、露口茂、東野英治郎、岸田今日子、中村竹弥、和崎俊哉、常田富士雄、青山良彦、そして東京ぼん太といった面々がキャスティングされた。当初杉に決まっていた大工の役は慶応ボーイ松川勉に変更されている。
杉良は、殺陣は共演の中村竹弥に特訓を受けたという。その中村とは後に「大江戸捜査網」で共演することとなり、東野英治郎とも「水戸黄門」で共演することになるのだった。杉の人脈はこの時、既に築かれていたのかもしれない。
長くなりそうなので、次回に続く。