人形佐七捕物帖(若山富三郎版) | お宝映画・番組私的見聞録

人形佐七捕物帖(若山富三郎版)

前項で名前が出たところで、若山富三郎の話題である。個人的には若山と勝新太郎の兄弟にはあまり関心がなく、出演作品も好きなタイプのものがあまりなかったせいか、ここではほとんど取り上げていなかった。
まず若山のスタートが新東宝だということを意外に思う人も多いかもしれない。まあ、三年ほどで東映に移っているし、エログロ路線でインパクトの強い現代劇ではなく、どうしても印象の薄くなる時代劇部門だったこともあるだろう。その短かった新東宝時代で若山の主演シリーズものだったのが「人形佐七捕物帖」(56年~58年)である。以前ここでも取り上げたが、横溝正史の原作で何度もテレビ化、映画化されているシリーズである。人形のように美しいから人形佐七なのだが、どちらかといえば武骨な感じの若山には似合っていない気がする。シリーズは「妖艶六死美人」「大江戸の丑満刻」「花嫁殺人魔」「浮世風呂の死美人」「腰元刺青死美人」の五本あり、女房役は日比野恵子(4,5作目は別の役で出演)、下っ引き役は鮎川浩、小高まさる、水原爆らが演じている。若山は59年に東映に移籍したが(日比野恵子も「腰元刺青死美人」を最後に新東宝を退社している)、新東宝では中村竜三郎を佐七役に据えシリーズを継続、「鮮血の乳房」「裸姫と謎の熊男」の二本が制作された。
東映に映った若山だったが、ここでも「人形佐七捕物帖」シリーズ(60年~61年)が制作されることになる。「般若の面」「くらやみ坂の死美人」「血染めの肌着」「ふり袖屋敷」「恐怖の通り魔」「闇に笑う鉄仮面」の六本が制作されている。もちろん、若山以外の出演者は代わっており、女房役に大川恵子、下っ引き役は大泉滉が演じている。正直、新東宝版も東映版も見たことはないが、サブタイトルからして微妙に違う気がする。やはり新東宝はより「女」が強調されていると思う。
そんな若山だが、62年今度は弟・勝新のいる大映へと移籍し、城健三朗となる。主演はまわってこなかったが女房(藤原礼子)と愛人(安田道代)を見つけることとなる(その分干されたという)。
再び東映に戻り、名前も若山富三郎に戻すのは66年のことである。