風来忍法帖 | お宝映画・番組私的見聞録

風来忍法帖

中川ゆきがヒロインを務めた映画に「風来忍法帖」(65年)がある。山田風太郎の小説を映画化したもので、主演も渥美清とくれば面白そうな気がするのだが、評判はよろしくないようである。とはいっても本作はソフト化はされていないようだし、当然私も未見だし、ネット上でこの作品の批評も一つしか見つからないのだが、ほとんど語られることがないということは、不評だったと判断してもよいのではないか。
実は山田風太郎の小説って読んだことがないのだが、「甲賀忍法帖」を漫画化した「バジリスク」を見た限りでは、伊賀と甲賀十人づつの忍術合戦が繰り広げられ単純に面白かった。横山光輝の「伊賀の影丸」が好きな人なら面白いはず。というより横山は明らかに山田の作品に影響を受けていたと今さらながら思ったりする。「風来忍法帖」も原作では七人の香具師が強力な三人の風摩忍者と戦うといったようなものらしいが、映画では香具師は渥美清、佐々十郎、佐藤允が演じる三人しか登場しないし、原作には他に七人の九の一が出てくるらしいが、本作には登場しない。まあ渥美、佐々という顔ぶれで喜劇っぽい作品であることは想像がつく。風摩小太郎を演じるのは平田昭彦で、原作にも登場するその配下の三人には千葉敏郎、早川恭二、川路誠が扮している。で、ヒロインの姫様が中川ゆきで、その祖父が藤田進、豊臣秀吉に有島一郎、石田三成に堺駿二、他に波田久夫、戸上城太郎などが出演している。
普通、主役の三人と風摩忍者が戦うというようなストーリーを予想するが、どうもそうではないようで、意味ありげに登場する伊賀や甲賀忍者などはほとんどストーリーには関係ないらしい。あくまでも喜劇らしく、腕よりも口で戦うといった感じのようだ。
この映画には続編「風来忍法帖 八方破れ」があるのだが、こちらの公開は何故か三年後の68年となっている。純粋に本作の後編のようなので、撮影自体は続けて行われたと思われ、通常あまり間をあけずに公開されるものだが、やはり不評だったのであろうか。三年のお蔵入り状態になっていたようだが、こちらの方は前編よりはずっと面白いとのこと。中川ゆきはその間に女優を引退してしまったようで、公開順では、これが中川ゆきの最後の出演作品となっている。