血と掟
前項で松竹にアクション映画はほとんどない、と書いたが任侠映画もほとんどないと思っていた。しかし藤岡弘がデビューした65年、異色の新人がやはり松竹からデビューしている。元安藤組組長・安藤昇(当時39歳)である。
自分は任侠映画に興味がないこともあってか、安藤昇に関しては、本物のやくざだったということぐらいしか知らなかったし、デビューが松竹だったというのも初めて知った。てっきり東映だと思っていた。「血と掟」は彼の自伝を映画化したもので、主人公は安藤昇自身である。それを詳しい経路は知らないが安藤昇自身が演じることになったという作品である。
他の出演者に菅原文太、高宮敬二、伊沢一郎、細川俊夫、藤岡弘そして丹波哲郎。この顔ぶれを見ると、ホント松竹作品という感じがしない。ほとんど東映のイメージが強いメンバーだし、もし時代が60年とかであれば、完全に新東宝作品だと思ってしまう。文太、高宮そして吉田輝雄、寺島達夫の新東宝ハンサムタワーといわれた四人は新東宝解散後、全員が松竹に移籍していたのである。しかし吉田や寺島はともかく、文太や高宮はソフトな松竹作品には合わない風貌なせいもあってか、脇に甘んじていた。しかしヤクザ映画となれば、当然のように担ぎ出された。文太はこの作品で安藤と知り合い、67年には共に東映へ移籍することとなる。
女優陣も城美穂に江畑洵子と元新東宝勢で、城は安藤の妻を演じている。他にも金沢重勝、津崎公平、大木剛という聞きなれない名前があるが、彼らは本作を含めた「安藤映画」以外への出演歴はないようである。彼の舎弟とかだったのであろうか。
それにしても、この前年まで刑務所に入っていた人である。共演者たちは怖かっただろうなと思う。