無言の乱斗 | お宝映画・番組私的見聞録

無言の乱斗

当時15歳だった和田浩治が主役デビューした作品が「無言の乱斗」(59年)である。父親はピアニストで本人も音楽学校に通っていたところをスカウトされている。和田自身はピアノではなく、映画でもよく見られたがドラムが得意だったようである。本作の監督は西河克巳だが、日活の常務が「西河がOKならOK」との判断で、和田の抜擢が決定した。これは西河が「若い傾斜」という作品で予定外だった赤木圭一郎を大役に抜擢して成功した実績を見込んでのことだった(西河本人インタビューでは赤木を主役に抜擢したとなっているが、この作品の主演は川地民夫である)。ただタイトルに関しては「練鑑ブルース」にしたかったそうだが、却下されたらしい。確かに鑑別所が舞台なのでわかりやすくはある。和田の役柄も当然、人を刺して(ちなみに高品格である)鑑別所の入所してきた少年である。やはり入所している少年たちを演じるのが杉山俊夫、神戸瓢介、武藤章生、浅沼創一などこの後も日活のバイブレイヤーとして活躍する面々だ。対して教官を演じるのが葉山良二、近藤宏、そして中村主水の妻として名高い白木万理(当時マリ)である。そして和田の許婚役なのが清水まゆみ。デビュー作からのコンビなのである。

タイトル予定だった「練鑑ブルース」という歌をコロムビアから出したのが守屋浩だが、彼は堀威夫とスイング・ウェストのバンドボーイであった。前々項のことを詳しく書くと、この「無言の乱斗」にはスイング・ウェストも出ており(ノンクレジットだが)、堀は西河に守屋の歌を使って欲しいと売り込んだのである。守屋の見た目も良かったことから、西河は守屋を出演させることにし、和田とはコンビのようになったのであった。ところで、タイトルは「無言の乱斗」と「練鑑ブルース」どちらがよいと思うだろうか。個人的には「無言の乱斗」で良かったと思うのだが(意味はよくわからんが)。