五十万人の遺産 | お宝映画・番組私的見聞録

五十万人の遺産

前項から時代がかなり飛ぶのだが、62年に三船敏郎は三船プロダクションを設立、翌年には自ら監督、そして主演となる「五十万人の遺産」を制作した。出演は三船を初め、仲代達矢、三橋達也、山崎努らが顔を揃えるが、しかしこのメンバーだと黒澤作品「天国と地獄」(63年)のメインキャストが、そのまんま流れてきた感じである。実際「天国と地獄」のすぐ後にこの作品は制作されているので、無関係ではあるまい。他にも土屋嘉男、田島義文、星由里子、浜美枝、そしてニューフェイスの同期生・堺左千夫などが出演している。スタッフでも田中友幸、藤本真澄という東宝の二大プロデューサー、脚本も菊島隆三と一流どころが揃っていたが、世間一般の評価としては失敗作という烙印を押されている。実際見ていないので何ともいえないが、三船に監督としての力量がないのか、話自体つまらないのか、よくわからないが評判はよろしくないようだ。これに懲りたのか、三船が自らメガホンを握ることは二度となかったが、映画制作をやめることはなく石原プロと共同した「黒部の太陽」などのヒット作も生み出した。

いずれにしろ「五十万人の遺産」は三船唯一の監督作品という貴重な映画となっている。それだけでも見る価値のではないだろうか。まあ評判どおりつまらないかもしれないけれども。