素浪人月影兵庫
先日よりCS東映チャンネルで、近衛十四郎の素浪人シリーズの第1弾である「素浪人月影兵庫」が始まった。素浪人シリーズは四作品あるが、個人的に見ていたのはおそらく「花山大吉」や「いただき勘兵衛」だったようで、「月影兵庫」を見るのは多分初めてだと思う。これには第1シリーズ(65年10月~66年4月)と第2シリーズ(67年1月~68年12月)が存在していたのも初耳で、今放映されているのは貴重な第1シリーズである。近衛の相棒といえば、品川隆二扮する焼津の半次だが、当初からその掛け合いはあるのだが、それほどコメディぽかったわけではない。というより、この第1シリーズにかぎって言えば、かなりシリアスな路線だったといえるようだ。もともと品川は二枚目路線の人なのだが、半次を見たあとで二枚目な品川を見るととても違和感を感じてしまう。品川も半次みたいな役ばかり来るようになったということもあり、決して好きな役ではなかったと語っている。
さて、第7話「赤鞘だけが知っていた」が個人的に面白かったので紹介したい。これは簡単にいえば、兵庫が武芸者揃いの五兄弟に勝負を挑まれ死闘の末、彼らを倒すというものだが、その五兄弟の顔ぶれが、尾上鯉之助、千葉敏郎、堀田真三、宍戸大全、大里健太郎(役柄上の兄弟順)というもので、名の知られた面々が並んでいる。千葉敏郎は以前にも書いたが腕の立つ浪人をやらせれば、右に出るものはいないと勝手に思っている役者で、ここでも剣の達人だ。宍戸大全は役者としてよりスタッフとして名を見かけることが多い、スタントの人である。必殺シリーズでは「特技」という肩書きでその名を連ねていた。今回は手裏剣担当。尾上鯉之助と大里健太郎は59年の映画「里見八犬傳」で、八剣士のメンバーとして里見浩太郎や伏見扇太郎とその名を連ねていた役者だ。尾上などは主演映画も製作されたのだが、さほど人気を得られず脇にまわり、この頃(四年ほどしかたっていないが)には太ってしまい悪役を演じるようになっていた。そして堀田真三(当時は脇中昭夫)だが、この時はデビュー直後で当時まだ20歳だったはずだが三男坊の役である。ドスの利いた声は当時からで、妙に貫禄がある。ちなみに千葉は38歳、年下役の宍戸は35歳、尾上は32歳、大里は不明だがおそらく尾上と同じくらい。つまり堀田だけ10歳以上離れていた新人役者だったのだが、ベテランたちに混じっていても違和感はなかった。ラストの四兄弟との死闘(大里は冒頭で斬られている)も、中々迫力があり長兄役の尾上が最後の相手となるだろうと思いきや、一番に斬られるという展開も意表をついていた。
60年代のテレビ時代劇をさほど面白いと思ったことはなかったのだが、このシリーズはある意味70年代の時代劇っぽくて(逆か?)好みである。