夕陽が呼んだ男 | お宝映画・番組私的見聞録

夕陽が呼んだ男

森田健作の「夕陽」シリーズ(勝手に命名)は、もう一作品ある。それが「夕陽が呼んだ男」(70年)である。タイトルだけ聞くと、石原裕次郎か小林旭が登場する日活映画っぽいが、地味な松竹映画である。森田はここでも、自動車工場で働く快活な青年という役柄だが、実は財閥一家と血縁関係にあるという大映ドラマっぽい設定があったりする。で、そこの兄弟の兄のほう(竹脇無我)は、森田にも優しく接してくれるのだが、ドラ息子な弟のほうは森田と対立する。その弟を演じるのが藤岡弘なのである。青春ドラマによくある主人公を敵視し、貶めようとする存在だ。森田健作はデビューから今に至るまで、ずっと正義の人のイメージだが、藤岡弘もアウトロー的なところはあっても結局は正義の人であるイメージだと思う。しかし、やはりそれは「仮面ライダー」以降のことであって、それ以前、つまり松竹時代の藤岡弘はこういったいわば悪役を演じることもあったのである。恋人役は「夕陽の恋人」と同様に尾崎奈々で、他の出演者は藤岡琢也、左とん平、水戸光子、そして辰巳柳太郎などである。嫌な藤岡弘が見れる、ある意味貴重な作品なのである。