ジャングル黒べえ | お宝映画・番組私的見聞録

ジャングル黒べえ

藤子不二雄作品は健全な子供向け作品の代表のように思われているが、何故か前項の「ドラえもん」のように世に出なくなってしまった作品がいくつかある。ご存知の方も多いと思うが「ジャングル黒べえ」(73年)も今は見ることのできないものの一つだ。旧「ドラえもん」は行方不明な作品だが、こちらは封印されてしまった作品である。大ざっぱな認識では、この作品が黒人差別にあたるという理由で封印されてしまったと思っている人が多いと思うが、実際は少し違っているようである。詳しくは安藤健二氏の「封印作品の謎2」に書かれているのだが、その抗議は「オバケのQ太郎」の1エピソードについて行われたものであり、出版社側はそれに過剰反応して、「ジャングル黒べえ」まで封印してしまったという説が有力である。まあ当時(89年)は、「黒人差別をなくす会」による抗議行動が猛威を振るっており、あの「ちびくろサンボ」が封印状態の追い込まれたりしていた頃である(現在は復活している)。この団体は当時は大阪の一家三人がそう名乗っているに過ぎなかったのだが(現在は二百名を超えるらしい)、バックに大きな組織が控えているのではと、出版社側がビビッてしまったのである。大出版社なら多少の抗議くらいはねつける度量が欲しいところであるが、面倒は御免ということなのだろう。それに伴いアニメの方も封印されることになった。「東京ムービー・アニメ主題歌大全集」にも収録されず、存在していなかったかのような扱いとなっているのが現状である。CDは収録されているものがあり、唯一その存在を証明するものとなっている。

ところでこの作品はアニメ企画の方が先行しており、原案を考えたのがあの宮崎駿だったというのはファンの間では有名な話だ。しかしそれは黒人ではなく、コロボックルのようなキャラだったらしく、それを変えたのは楠部三吉郎(現・シンエイ動画社長)だったという。27年延々と続くアニメ「ドラえもん」を成功させた立役者が、皮肉にも「黒べえ」に関しては封印される原因を作ってしまったともいえる。コロボックルといえばこの73年には「冒険コロボックル」というアニメも放映されているが、それは偶然だったのだろうか。