家庭の事情シリーズ | お宝映画・番組私的見聞録

家庭の事情シリーズ

古い話題が多くなっているついでにもう一つ、トニー谷である。自分なんかの世代では、かろうじて「アベック歌合戦」(62年~)での「あなたのお名前なんてえの」という拍子木を叩きながら(ソロバンではない)の司会ぶりを生で見た記憶が残っている程度である。当時はもちろん知らなかったが、人気が落ち目になっていたトニー谷はこの番組で復活を遂げていたのであった。大人気だったのは50年代で、初の主演映画として作られたのが「家庭の事情」シリーズ(54年)である。1作目の「馬ッ鹿じゃなかろかの巻」「さいざんすの巻」「おこんばんわの巻」「ネチョリンコンの巻」の計四本が作られている。これらのタイトルはいずれも彼のギャグ?であり、当時の作品らしくいずれも50分弱くらいである。共演はかろうじて知っている名前をあげると重山規子、柳谷寛、千葉信男、有木山太、谷晃、寺島雄作といったところであろうか。ちなみに2本目だけ頭に続がつく(つまり続家庭の事情・さいざんすの巻)。トニー谷という人はかなり不幸な生い立ちを背負っている人のようで、継母から虐待を受けていたとか最初の妻は空襲で行方不明になったとか色々あるようだ。順調に見えた芸人生活も55年に長男が誘拐されるという事件にあってしまう。当時は報道協定などもなく子を心配する彼の素の姿が報じられ被害者なのに人気を落とすという目にあう。結局無事に戻ってきたのだが、このときから晩年までマスコミ嫌いだったという。

冒頭の「アベック歌合戦」の終了(68年)と共に姿を消したような印象が強いが、実際は「スター飛び出せ歌合戦」を経て71年の「トニーの外人歌合戦」が3ヶ月で終了した後に休養期間に入り、そして77年の「てんぷく笑劇場」でまた復活していたのである。個人的にも子供の頃にテレビで見たのが最後だった(と思う)ので意外な事実であった。